ドイツの食材
ドイツ・サッカーロード「食の旅」

ドイツ・サッカーロード「食の旅」
ワールドカップ・ドイツ大会の開催日が日一日と迫り、期待と興奮で胸躍るファンが多く見られるようになってきました。

さて、ワールドカップの楽しみ方はいろいろとありまして、現地へ応援にいかれる方、テレビの前で一人眠れぬ夜を過ごす方、あるいは友人同士で集まってにぎやかにテレビ観戦を楽しむ方、または翌朝のテレビのニュースや新聞で結果を楽しみにご覧になる方など、本当に千差万別あることと思います。でもただ見ているだけでは物足りないのではありませんか?やはり、そこはドイツ料理を味わいながら、体の中からドイツに染まってこそ、ワールドカップ観戦をエンジョイできるのではないでしょうか。

そこで今月からは皆様を競技が開催される都市・地方にご案内しまして、その土地の特色ある食材や名物、そしておいしい料理をご紹介いたします。

きっと明日からあなたもドイツ料理通、ワールドカップの応援もより一層楽しくなることでしょう!

それでは、2006年ワールドカップ・ドイツ大会「サッカーロード・食の旅」へ出発いたしましょう。
バイエルン州
初めにご案内いたしますのは、6月9日ワールドカップの開幕戦ドイツ対コスタリカ戦が行われるミュンヘン、そして6月18日には日本にとっては第二戦となる日本対クロアチア戦が行われるニュルンベルク、この2つの大都市をかかえるバイエルン州です。

ドイツの南玄関ミュンヘンを州都にもつバイエルン州はドイツにある16州の中で一番面積が広く、その広さは70,550km2、2番目に広いニーダーザクセン州の47,620km2と比べると約1.48倍の広さがあります。さらに日本の国土と比較するとおよそ5分の1に近い広さになります。また州の人口は約1,247万人(2005年9月現)、そのうち約一割にあたる125万人がミュンヘンに、ニュルンベルクには約50万人が住んでいます。そしてこの数字はこの二つの都市をバイエルン州の人口の多い都市1位と2位に位置付けています。

バイエルン州は7つの行政地域から成っていて、その料理文化は北部のフランケン地方、南部のオーバー・バイエルン地方さらには西側のバーデン・ヴュルテンベルク州と隣接するシュヴァーベン地方等、それぞれの地域の影響が混ざり合い、幅広い顔を持っています。そしてさらに、南側はオーストリアに800km以上にわたり隣接、東側は約350kmに渡ってチェコ共和国に隣接していることを考えれば、これらの国々ともいろいろな文化の面で影響し合っていることは明らかです。さらに私たちが忘れていけないことは、長い歴史の中でヨーロッパの国境線は、どれだけもひき直されてきたということで、このことはヨーロッパの食と料理の文化を考えるときに重要視しなくてはいけない要素の一つです。

Getränke -飲料-
Bier -ビール-

バイエルン州ではホワイトアスパラガスをはじめ、いろいろな野菜、多種多様な農産物や畜産物が栽培・生産されていますが、ビールの原料になるホップの生産量は、特筆すべきものがあります。Hallertau -ハラータオ地域-、Spalt -シュパルト-地域などバイエルン州のホップ作付面積は約15,000ヘクタールにおよび、世界のホップ生産量のおよそ3分の1がこの地域で生産されています。そして「ホップ」と言えばビール、「ドイツビール」と聞けば「オクトーバー・フェスト」を思い浮かばれている方も多いのではないでしょうか?そう、ドイツ最大の、そして世界最大と言ってもよいビール祭り「オクトーバー・フェスト」が行われるのがバイエルン州都・ミュンヘンなのです。年によって多少日程は変わってきますが、9月中旬〜下旬/10月初旬にかけて開催されます。今年2006年のオクトーバー・フェストは9月16日から10月3日まで開催される予定です。毎年大変なにぎわいを見せるこのビール祭りにはドイツ国内だけでなく海外からも多くのビールファンが集い、ビールジョッキ片手にミュンヘンの夜を心いくまで楽しんでいます。昨年度の来場者数は610万人で、期間中に飲まれたビールは6,035 キロリッターとのことです。(主催者発表)

バイエルン生まれ、あるいはバイエルン名物のビールはWeissbier(ヴァイスビア)・Weizenbier(ヴァイツェンビア)を始め、Dunkel(ドゥンケル)Helles /Helle (ヘレス/ヘレ)Märzen(メルツェン)、そしてバンベルク出身のRauchbier(ラオホビア)、あるいはフランケン地方出身のKellerbier(ケラービア)などいろいろあります。そしてこれらのビールは運搬手段の発達が目覚しい今日ではバイエルンのみならず、ドイツ国内至るところ、さらには世界各国の街角で飲むことができ、世界中のビール愛好家の咽を楽しませてくれています。

Wein -ワイン-

バイエルン州では州北部フランケン地方がワインの生産地域で年間4万キロリッター以上のフランケンワインが生産されています。ドライタイプが主流のフランケンワインは、Bocksbeutel(ボックスボイテル)と呼ばれる丸く平たい形のビンに入っているのが特徴です。

Brot -パン-
Brezen -ブレツェン-

バイエルンの名物で、この地方では Breze(ブレツェ)あるいは Brezen(ブレツェン)と呼ばれていますが、一般には Brezel(ブレツェル)の名前で馴染みの深い、ユニークな形をしたパンです。生まれがどこなのか、どうしてこのような形をしているのか、諸説ありますが、一説には修道士が祈りを捧げている姿、右手を左の肩に、左手を右の肩においた形をあらわしていると言われています。 種類豊富なブレツェンですが、水酸化ナトリウム液につけ、岩塩の粒をのせて焼き上げるLaugenbrezen(ラウゲン・ブレツェン)が一番ポピュラーです。茶色に焼き色がつき、塩分がほどよく効いたブレツェンは、ドイツの街角のImbissbude(インビスブーデ=スナック屋台、スタンド)で良く見かけ、ちょっとした空腹しのぎにもってこいの、皆から愛されているパンの一つです。 また、このパンを大量生産する際でも生地を紐状にするまでは機械作業で行われますが、そこから先ブレツェンをその形に形成するのは今でも、一つ一つ手で作業されています。

Wurst -ヴルスト(ソーセージ)-
Weißwurst -ヴァイスヴルスト-

これはその名の通り、白い(Weiß) ソーセージ(Wurst) のことで、ミュンヘンのスペシャリティーです。伝統的に早朝に作られたものを午前中にマルクト(市場)のインビス(スナック)・スタンドやレストランで甘口のマスタードをつけてブレッツェンそしてビール片手に食べるのが普通です。午後になると鮮度が落ちてしまうという理由から、「ヴァイスヴルストは正午の鐘の音を聞いてはいけない」と言われ午後には食べることはできませんでした。もちろん今日では冷蔵技術が発達し午後でも食べることは可能になりましたが、今でも午後にはヴァイスヴルストを提供しない飲食店はとても多く、もしミュンヘンのレストランにお昼過ぎに入られて、「ヴァイスヴルストは、ありません」と言われても驚かないでください。これはまったく日常茶飯事、普通のことなのです。

またヴァイスヴルストの食べ方はちょっと普通のソーセージと違うのでご注意ください。茹でるときは、75℃前後の湯の中で10分間ほど茹でます。決して沸騰した湯の中で茹でないでください。ソーセージの皮が破裂してしまい、おいしいヴァイスヴルストが台無しになってしまいます。そして茹で上がったヴァイスヴルストのケーシング(皮)は食べません。お皿の上で横半分にナイフで切れ目を入れて上手に皮を外すか、あるいは、口に入れて歯で中身だけを皮から押し出して食べるか、ただこれは後があまりきれいではありませんが、なにしろ皮は外して、甘口のマスタードをつけて召し上がってください。口の中で広がるヴァイス・ヴルストのジューシーで口当たりの柔らかい、それでいて濃厚な味わいが甘口のマスタードとハーモニーして至福の時を与えてくれます。ことばは必要ありません。ただそれを味わい、そのわずかな時を楽しんでください。

Nürnberger Rostbratwurst -ニュルンベルガー・ローストブラートヴルスト-

ニュルンベルク生まれの小さいサイズのソーセージで長さにして約7〜9cmほど、直径は1.5cm前後のもので、マジョラムのスパイスが効いた特徴ある味を出しています。焼いたソーセージを普通6本を一皿として、ザワークラウトかポテトサラダを付け合せに食します。









Regensburger Wurst -レーゲンスブルガー・ヴルスト-

19世紀中頃にレーゲンスブルクで作られたもので、10cm前後の長さに約4cmの直径の太目のソーセージで茹でて食べるか、あるいはスライスソーセージとして、切って食べます。別名をクナック・ヴルスト、クナッカーとも呼ばれ、ドイツ国内ではこの名前の方が知られている感もあります。歯ごたえの良い、クランチ・タイプのレーゲンスブルガー・ソーセージは、その中に小さくサイコロ形に切った豚肉が混ざっているのが特徴で、Regensburger Wurstsalat (レーゲンスブルガー・ヴルストサラダ)として、サラダのメイン具材としても使われます。







Leberkäse -レバーケーゼ-

Leberkas(レバーカース)、Leberkäs(レバーケース)あるいはFleischkäse(フライシュケーゼ)等いろいろな呼び名で呼ばれているローフ型のソーセージです。

18世紀後半にバイエルンの当時の選帝候がバーデン・ヴュルテンベルク州 マンハイム(都市名)から一人の肉屋を連れて戻り、その肉屋がこのレバーケーゼを初めて作ったと言われています。その作り方は主材料に豚肉、子牛肉そしてベーコン等を使い、玉ネギと種々スパイスをミックスして良く練り、ペースト状にしたものを焼型に入れオーブンで焼きます。「ケーゼ」と言っても「チーズ」とは何も関係はなく、(ドイツ語ではチーズのことを「ケーゼ」といいます)これは当時このソーセージを焼くのに用いられた「Kasserolle -キャセロール-」の呼び方が変化したものと思われます。また「レバー」の部分も肝臓のレバーではなく、「Laib」(ライプ=ひとかたまり)ということばが、長い年月の間に発音の仕方が変わり現在に至っているという説もあります。 

バイエルン生まれのこのソーセージは今では全国的なもので、ドイツでは好んで食べられるソーセージの一つです。そのまま薄めに切ってパンにのせたり、温めて厚めに切ってパンにはさんだり、厚めのものをフライパンで両面焼いて、目玉焼きとポテトサラダを添えて食べたりと、そのバリエーションも様々です。どうぞその日の気分で食べ方を選んでみてください。

Knödel・クヌーデル
Kloß(クロス)、あるいは Klöße(クロセ)ともいわれる「クヌーデル」は日本語では「団子」と訳されています。レシピによっていろいろな味や大きさがあり、スープに入れたり、メインの料理の付け合せにしたりと食べ方も様々です。基本的には団子型あるいは玉子型です。「クヌーデル」はドイツの地方や土地によっても異なり、また家庭によっても作り方がその家独自のものがあったりと、そのバリエーションは本当に数えきれません。

さて、ではバイエルンの「クヌーデル」のスペシャリティーはというとSemmelknödel「ゼンメル・クヌーデル」とLeberknödel「レバー・クヌーデル」が上げられます。次に基本的な作り方をご説明してみましょう。

Semmelknödel -ゼンメル・クヌーデル-

ゼンメルとは南ドイツ地域、特にバイエルンで「Brötchen・ブレートヒェン」丸い手のひらに乗るくらいのパンのことで、普通は朝食時に食されています。焼き上がりから一日ほどたって少々硬くなったこのブロートヘェンを小さく切って、まずは牛乳でふやかし、水気を良く絞ったものを玉ねぎとパセリのみじん切り、さらに卵液と一緒に練り合わせ、塩、胡椒で味を整え、生地を作ります。これをボール型に形作り、たっぷりの湯で20分ほど茹でて出来上がりです。このゼンメル・クヌーデルは主として肉料理の付け合せとして供され、そのメイン料理のソースをからめて食します。

Leberknödel(レバー・クヌーデル)

バイエルン州のみならず、南ドイツとオーストリアの伝統的な料理の一品で、ドイツ国内では、プファルツ地方(ラインランド・プファルツ州)と南ドイツ、バイエルンで食されています。

作り方は牛のレバーを挽肉器にかけミンチにし、これに牛乳あるいは水でふやかしたブロートヘェンと卵液、パセリのみじん切りを混ぜて練りあわせ、塩で味を調えます。直径5〜7cmのボール型にしたり、2本のスプーンで楕円形にして形を作り、塩茹で、あるいはスープやブイヨンの中で火を通して食します。また油で揚げたり、焼いて食べるレシピもあり、いろいろな食べ方で味わえる一品です。

Käse -ケーゼ-
バイエルン南部にはアルゴイ地方が控えており、ここで生産されるチ−ズはドイツ国内はもとより、世界中から愛されています。このアルゴイ地方で製造されるAllgäuer Emmentalkäse -アルゴイ産エメンタールケーゼ-と、Allgäuer Bergkäse -アルゴイ産ベルクケーゼ-の2品はEUのPDO -原産地名称保護制度-に登録されており、その規定に沿って限られた地域で作られたものにのみこの名称を使うことが許されています。

アルゴイ産エメンタールケーゼ

なめらかで弾力のある組織に、丸くサクランボ大の気孔が均一に入っているハードチーズで、外皮は黄金色から淡褐色までの艶やかなリンド(表皮)で覆われています。また、その香りは柔らかなナッツを思わせ、熟成が進むにつれ力強い味わいへと変化します。牛の生乳から作られ1個の重量は80〜90Kgと重いチーズです。



アルゴイ産ベルクケーゼ

アルゴイ産エメンタールケーゼの弟分にあたり、1個の重さは20〜30Kgほどのハードチーズで、良質の生乳を原料に作られています。このチーズにはエンドウ豆大の気孔があり、熟成期間によってスパイシーな味わいから濃厚なコクのあるものまで様々な味を楽しむことができます。ベルクケーゼは時として「アルペンケーゼ」とも呼ばれ、ドイツ産ハードチーズの中で最も人気の高いチーズです。

これらのチーズはそのままスライスして食べることはもちろんのこと、いろいろなレシピに利用されその料理の味を濃厚にそして芳醇な香りに仕上げます。

バイエルン州ではこの他にもいろいろなチーズが製造されており、一年間のこの州でのチーズ製造量は60万トンを超えています。そしてその1/4はアルゴイ地方で製造されているのです。アルゴイ地方でのチーズ製造の歴史は古く、中世までさかのぼることができ、当時は修道院が主なチーズの製造所となっていました。今日アルゴイ地方では数百種のチーズが製造されており、ハードチーズのみならず、セミハードチーズやソフトチーズも作られています。

Backwaren -焼き菓子-
Lebkuchen -レープクーヘン-

ニュルンベルクの街の名を有名にしているものの一つにレープクーヘンがあります。この焼き菓子には甘味料としてハチミツを入れますが、その特徴はシナモン、クローブ、オールスパイス(ピメント)、ナツメグ、コリアンダー、カーダモン、メース、ジンジャー、アニス等のスパイスによってかもし出される芳醇な味と香りにあり、クリスマスには欠かせない菓子の一つとなっています。もちろんクリスマスでなくても、一年中入手できるお菓子です。

その形は丸いものから、星型、人型、その他種々あり、大きさに至っては小さいものから大きなものまで、一口サイズから、ケーキのように切って食べるものまで数えきれません。そして味のバリエーションもたくさんあり、砂糖がけしたものや、チョコレートコーティングしたものはその中でもポピュラーなものです。ちょっとスパイシーなものは苦手という方も、一度召し上がってください。その味覚の虜になることはきっと間違いありません。


さて、バイエルン州の食の旅はいかがでしたでしょうか?だいぶお腹もいっぱいになられたことと思います。「ドイツ料理のレシピ」のページでもバイエルンのスペシャリティ−をご紹介しておりますので、是非お試しください。もちろんバイエルン州にはまだまだたくさんの名物やおいしい料理がありますが、それらにつきましてはまたいずれ時間を見つけてご案内いたします。そろそろ停車時間がなくなってまいりましたので、皆様どうぞお座席に戻られましてお待ちください。もうじき発車時刻となります。

参照