ドイツの食材
パン

Brot ・ パン
ドイツパンと言うと一般的にライ麦パンや黒パンが知られていますが、実はドイツはパンの国と言っても良いほど、種類豊富なパンがある国なのです。Brot / ブロートとパンのことをドイツ語では言いますが、その数は推定でも約300種、小型パンにいたっては1,200にのぼる種類があるとされています。これらのパンは朝昼夕の食事の時だけでなく、間食時やスナック、お弁当そして様々なパーティーの際など、あらゆる機会において食されています。そしてどのような料理にもマッチするパンをその種類豊富なバリエーションの中から選ぶことができます。パンはドイツでは欠かすことのできない食品なのです。

ドイツで作られるパンは、それぞれに使用されている原料穀物の配分や製粉方法等により大きく分類されています。小麦粉を使ったWeizenbrot / ヴァイツェンブロート(小麦パン)とWeizenmischbrot / ヴァイツェンミッシュブロート(ミックス小麦パン)、ライ麦粉を使ったRoggenbrot / ロッゲンブロート(ライ麦パン)とRoggenmischbrot / ロッゲンミッシュブロート(ミックスライ麦パン)、またSpezialbrot / シュペツィアルブロート(スペシャルブレッド)と呼ばれる小麦やライ麦だけでなくその他の穀類をも使ったパンや、いろいろな材料を加えて作った個性的なパン、そして数限りなくあるKleingebäck / クラインゲベックと呼ばれる小型パンなどに分けられます。

それではまずドイツでパンに使われる穀物について主なものをご説明しましてから、ドイツのパンについてご紹介いたしましょう。

パンの原料となる穀物
Weizen / ヴァイツェン(小麦)
製パンの際の必需品である小麦は、ドイツ国内で栽培されている穀物のなかでは、最も収穫量の多い穀物です。小麦はパンをはじめとして焼菓子やケーキ類、ミュズリ、そしてその他パスタ等の原料として、さらには小麦胚芽油や酒類などの加工原料に使われています。小麦はその硬さからWeichweizen / ヴァイヒ・ヴァイツェン(軟質小麦)とHartweizen / ハルト・ヴァイツェン(硬質小麦)があり、また栽培時期によって、年の初めに播種をするSommerweizen / ゾンマー・ヴァイツェン(夏小麦)と秋に播種をし翌年の夏に収穫をするWinterweizen / ヴィンター・ヴァイツェン(冬小麦)に分けられています。ドイツでは栽培されている小麦の90%以上が冬小麦で、その作付面積は2004年度で約305万ヘクタール、そして収穫量は約2,500万トンでした。(統計出典:ドイツ連邦統計局)

Roggen / ロッゲン(ライ麦)
ライ麦もまたパン、焼菓子やケーキ類、ミュズリ、酒類等の原料とされる重要な穀物の一つで、寒冷の気候に強く、またいろいろな土質での栽培が可能な作物であることから石灰質の土壌や砂土質の海岸沿い、さらには低地や中級山岳地帯でも栽培されています。ドイツでも北部の地域で多く栽培されており、2004年度におけるライ麦年間総収穫量383万トンのうちブランデンブルク州の収穫量が最も多く約100万トン、次いでニーダーザクセン州で約82万トンでした。(統計出典:ドイツ連邦統計局) この2州いずれもドイツ北部に位置する地域です。

因みにドイツ国内における小麦粉の一人当たりの年間消費量は2004年度で約67kg、ライ麦粉は約10kg、その他の穀物粉は約12kgでした。(統計出典:BMELV) なおこの数字はパンだけでなく、パスタや菓子、その他の飲食料品に加工されたものも含まれています。

Gerste / ゲルステ(大麦)
大麦もまたいろいろな土壌での栽培が可能で、寒冷地や高地でも栽培されています。ミュズリ、ポリッジ(粥)、ビールや酒類の原料として使われています。

Hafer / ハーファー(オート)
ハーファーは日本ではオート、あるいはオート麦、または燕麦とも呼ばれている穀物で夏収穫されます。湿度があり涼しい気候を好む作物です。オートはミュズリやダイエット食品の原料として用いられるのをはじめとして、欧米諸国ではこのオートを圧扁し、オートミールとして牛乳で炊いてポリッジ(粥)にして食べる方法も好まれています。

Weizenbrot und Weizenmischbrot・小麦パン、ミックス小麦パン
Weizenbrot / ヴァイツェンブロート(小麦パン)とWeizenmischbrot / ヴァイツェンミッシュブロート(ミックス小麦パン)はドイツで最も好まれているパンの種類で、その名の通り小麦粉を主な原料として作られるパンです。数あるドイツパンの中で、小麦パンとミックス小麦パンは特にマイルドなパンの部類に入り、たいていのものは柔らかいパン皮で覆われています。ヴァイツェンブロート=小麦パンはWeißbrot / ヴァイスブロート(白パン)とも呼ばれ、薄色でその成分の90%以上が小麦粉からできています。その他には水、イーストが加えられ、さらに砂糖あるいは乳製品が添加される場合もあり、いろいろな味を持つ小麦パンへとそのバリエーションの幅を広げています。小麦パンは特に朝食時のパンとして好まれており、ジャムやペースト類をぬって食されたり、またそのマイルドな味わいから濃い味の料理と軽いサラダの脇役としても好んで食べられています。この小麦パンは食べやすく消化のよいパンとしても知られています。

ヴァイツェンミッシュブロート=ミックス小麦パンは小麦粉とライ麦粉から作られており、その割合は小麦粉が50〜89%と決められています。小麦粉の割合が高ければ高いほどパンはマイルドな味わいを持ち、パンの皮も柔らかくなります。そして小麦粉の混合比率によって、パン生地のがっしりとしたBauernbrot / バウアンブロート(農家自家製パンという意味)から、マイルドで柔らかなパンまで、様々なミックス小麦パンが作られています。このミックス小麦パンはドイツで最も多く消費されているパンです。

Landbrot / ラントブロート(田舎風パン)
常食用パンとして大変好まれており、小麦粉にライ麦粉を少量混ぜて作られるミックス小麦パンです。マイルドな味でしっとり感があるのが特徴です。

Roggenbrot und Roggenmischbrot ・ライ麦パン、ミックスライ麦パン
粉の混合割合によって、味わいや香りの違うバリエーションが生まれるのがRoggenbrot / ロッゲンブロート(ライ麦パン)とRoggenmischbrot / ロッゲンミッシュブロート(ミックスライ麦パン)です。ライ麦パンにはビタミンをはじめ多くの栄養素が豊富に含まれており、ライ麦粉の混合割合が高ければ高いほどどっしりとした濃い味わいで、香りの高いパンに焼き上がります。ロッゲンブロート=ライ麦パンはその成分の90%以上、ロッゲンミッシュブロート=ミックスライ麦パンはその成分の50〜89%がライ麦粉から作られています。ドイツでは純粋なライ麦パンは主として特定の地方の名物パンとして知られ、地方名産品としての意味合いを持っているのに対し、ロッゲンミッシュブロート=ミックスライ麦パンは、ドイツ全国に普及されています。このミックスライ麦パンはドイツに数あるミッシュブロート=ミックスパンの中では、よりしっかりとした味わいで、より香り高いパンの部類に入ります。Sauerteig / ザウアータイク(サワー種=サワー・ドウ)あるいはイーストとサワー種を混ぜた生地からミックスライ麦パンは作られています。パンの色が濃いものほど、使用している粉全量に対してライ麦表皮の混合割合が多く、たいていの場合それは必須栄養素の含まれる比率も高くなることを意味しています。ライ麦パン、ミックスライ麦パンともに日持ちの良いパンです。

Vollkornbrot / フォルコルンブロート
フォルコルンブロートは全粒粉パンのことで、穀粒を表皮(ふすま)と胚芽を一緒に挽いた粉または砕片から作られます。使用する穀粒は小麦あるいはライ麦がほとんどでそれぞれの穀粒を90%以上使用したパンをWeizenvollkornbrot / ヴァイツェン・フォルコルンブロート(小麦全粒粉パン)、あるいはRoggenvollkornbrot / ロッゲン・フォルコルンブロート(ライ麦全粒粉パン)と呼び、それぞれ小麦パンまたはライ麦パンの種類に分類されます。このフォルコルンブロートには穀粒が持っている栄養素であるビタミン、ミネラル、必須脂肪酸、タンパク質、食物繊維等が多く含まれており、風味のあるパンとしてだけでなく健康に良いパンとしても好まれています。
Kleingebäck ・ 小型パン
1,200にのぼる種類があると言われているKleingebäck / クラインゲベックは小型のパンのことで、その種類の多さから選ぶのに悩むほどいろいろな味わいと形のものがあります。ドイツの小型パンはその皮をカリっとしっかり焼いたものがほとんどで、皮にパンの持つ本来の味が凝縮されていると言っても過言ではありません。まず香ばしいパンの香りに惹かれ、その香りと一緒にパンを一口、口の中で広がる皮とパンのハーモニーは、絶妙な味わいをかもし出します。さらにこの小型パンは目で味わうものとも言われるほど、その形の多様性に特徴があり、中には数百年に渡る伝統を持つものもあります。

小型パンの種類には、丸形や楕円形でパン皮がツルっと滑らかに焼き上げられたBrötchen / ブレートヒェンや、表面に切れ目やへこみをつけることによって、焼き上がり後のカリっとした皮の面積を増やし、より味わいを深くした小型パンも多くあります。さらには食油や砂糖を添加し生地を硬めにこね上げ、三日月パンやロールパン、クロワッサン、あるいは乳製品を加えチーズパン等にしたものもあります。形に特徴のある小型パンには、三日月パンのように生地を巻いて成形し焼き上げるものや、三つ編みパンのように生地を棒状あるいはひも状にして何本かを交互に編んでパンの形に作るものなどがあります。また小型パンにケシの実やクミンシード、あるいは胡麻を上から振って焼いたものや、生地にナッツ類やヒマワリの種、カボチャの種、また玉ネギやレーズン等といったものを混ぜ込んで焼き上げるものも人気があります。

Brötchen / ブレートヒェン
Brot / ブロート(パン)に「小さい」と言う意味の「・・・chen / ヒェン」が付いたブレートヒェンは、文字通り小さいパンと言う意味で、ちょうど手のひらの上に乗るぐらいの小型パンです。地方(特にバイエルン地方など)によってはこれをSemmel / ゼンメルとも呼んでいます。このブレートヒェンのバリエーションも豊富で、使われる粉も小麦、ミックス小麦、ミックスライ麦等々あり、形や添加される材料も様々です。ブレートヒェンはそのままガブっと食べる以外は、たいていは横半分切りにしていろいろなものをはさんで食べます。朝食にはたっぷりバターを塗り、ジャムやマーマレードをつけて食べることが多いですし、お弁当用にはハムやチーズ、またはゆで玉子などをはさみます。これにラップをして1つか2つカバンの中へ、そのような光景がドイツの家庭では多く見られます。

Spezialbrot ・ スペシャルブレッド (個性的なパン)
ドイツには個性的なパンもたくさんあり、これらはパン職人の革新的なアイディアから生まれたものが多いと言えるでしょう。使用する粉、添加される材料、あるいはパンの焼き方等にそれぞれの個性を出しています。大麦、オート、トウモロコシを挽いた特製穀物粉を使ったもの、あるいは玉ネギやナッツ類、またヒマワリの種やカボチャの種等の種子やスパイスなどの植物性の材料を加えたものや、牛乳、クワルク、バターなど動物性の材料を加えたパンもあります。また生地製法に特徴のあるSimonsbrot / ジーモンスブロート(ライ麦全粒パンの一種)やLoosbrot / ロースブロート(ライ麦を砕片にしたものから作るパン)や、パンの焼き方に特徴のあるHolzofenbrot / ホルツオーフェンブロート(石釜で薪を使って焼き上げたパン)、Pumpernickel /プンパニッケル、Knäckebrot / クネッケブロート(クネッケ)なども個性のあるパンとして好まれています。複数の穀粒を使ったMehrkornbrot / メアコルンブロート等も人気のあるパンです。また特別なダイエットパンもあり、通常のパンを補うため、あるいはその代わりとして食べられています。

Mehrkornbrot / メアコルンブロート
これは複数の穀粒粉を混ぜ合わせ焼き上げたパンのことです。使われる穀粒はそれぞれのパンにより、またベーカリーやパン職人によって異なりますが、主なものにはライ麦、小麦、スペルト小麦、大麦、オート、ソバ、キビなどがあります。三種類の穀粒を使ったものはDreikornbrot / ドライコルンブロ−ト、四穀を使ったものはVierkornbrot / フィアコルンブロート、そしてFünfkornbrot / フュンフコルンブロートは五種類の穀粒粉から作ったパンのことを言います。日本の五穀米ならぬ、五穀パンというわけです。複数の穀粒が混ざることによってパンはより一層味わい深いものになり、また混ぜ合わされる穀粒の種類によってそれぞれ特徴あるパンに仕上がります。メアコルンブロートはいろいろな穀粒の持つ異なった栄養素が含まれているパンとして、健康への関心の高い昨今、ドイツではとても人気のあるパンです。

Pumpernickel /プンパニッケル
プンパニッケルはヴェストファーレン地方出身のパンでその生地の作り方と焼き方に特徴があります。ライ麦を粗挽きにした全粒粉から作られ、濃い焦げ茶色の焼色を持つっています。プンパニッケルは専用のスチームの焼釜で100℃ほどの温度で約20時間焼いて作られます。サラミやハム、またいろいろな種類のチーズをのせたりとオープンサンドにしてもおいしいパンです。

Sonnenblumenbrot / ゾンネンブルーメン・ブロート
ヒマワリの種を使ったパンで、歯ごたえとマイルドな風味がかもし出されています。


ドイツの数あるパンのほんの一部をご紹介いたしましたが、きっとその多様性をおわかりいただけたことと思います。多くの種類のパンがあるということは、同時にそのパンの食べ方もいろいろあるということです。シンプルな食べ方から、時間をかけて調理する食べ方など、豊富なパンのメニューがドイツにはあり、毎日の食卓を楽しいものに演出しています。今回の「ドイツ料理のレシピ」のコーナーでは、パンを使ったスープとグラタンをご紹介しています。どちらも簡単にできて、ボリューム満点の料理です。是非一度お試しください。

参照