ドイツの食材
ジャガイモ 2

ジャガイモ・Kartoffeln
ドイツ人にジャガイモについて聞いてみると、彼らのジャガイモへのこだわりを感じさせられます。「あの料理を作る時はこの品種、サラダの時はあの品種」と言った具合に、それぞれがジャガイモとの付き合い方をよく心得ています。

前回お話ししましたように、ドイツではジャガイモを、(1)調理しても形がくずれない「煮くずれしないタイプ」、(2)最もポピュラーな「煮くずれしにくいタイプ」、そして(3)柔らかくホクホクとして「煮くずれやすいタイプ」と、3つの調理タイプに分類し、それぞれの品種がどのような調理方法に向いているかを定義付けています。これらはジャガイモの持つ水分とデンプン質の割合の違いから生じるもので、デンプン質が多くなれば水分は減少し、ジャガイモはホクホク感を増すことになるわけです。また収穫時期が遅い晩生になると、ジャガイモの持つデンプン質も多くなります。

ジャガイモ料理を美味しく作り、美味しく食べるコツは、その料理にどのタイプのジャガイモが適しているのかを知り、正しいタイプのジャガイモで調理することです。自分の好みのジャガイモだけを全ての料理に使うのではなく、それぞれを使い分けてこそ本当のジャガイモ通と言えるわけです。

ドイツでは現在約150種のジャガイモの品種が、食用ジャガイモとしてドイツ連邦品種管理局(Bundessortenamt)に登録されており、市場への流通が許可されています。今回は皆様に、その中からいくつかの品種をご紹介して、ドイツにはどのようなジャガイモがあるのかご覧にいれましょう。まずはその前に基本となるジャガイモ料理について簡単にお話をしてから、本題へと駒を進めてまいります。

ドイツ・ジャガイモの品種
ドイツには何百と言ってもよいほど、数多くのジャガイモ料理がありますが、ここではポピュラーで、ドイツでよく食べられている基本となるジャガイモの食べ方・料理を幾つかご紹介いたします。もちろん、それぞれの料理は地方・地域あるいは家庭によって、様々なバリエーションがあることは言うまでもありません。

ドイツでのジャガイモの食べ方で基本中の基本というと、シンプルな茹でジャガイモです。これには大きく分けて2種類あります。ザルツ・カルトッフェル(Salzkartoffel)と呼ばれる塩茹でジャガイモと、ペル・カルトッフェル(Pellkartoffel)と呼ばれる皮付き茹でジャガイモです。またジャガイモの一番おいしい食べ方と言われている蒸かしジャガイモ(ダンプフ・カルトッフェル:Dampfkartoffel)は皮付きのまま蒸かします。これらの茹でジャガイモは付け合せとしてだけでなく、軽い夕食のメインとして、あるいは食材の一つとしていろいろなメイン料理へとアレンジされます。

塩茹でジャガイモ(Salzkartoffel)
作り方:
ジャガイモの皮をむいてから1/2あるいは1/4に切り、塩を入れた水から約20分程中火で茹でます。付け合せにする場合は、供する直前に茹で上がるようにして、最後にパセリのみじん切りあるいはディルなどのハーブをかけ食卓へ供します。またバターをまぶすこともあります。

皮付き茹でジャガイモ(Pellkartoffel)
作り方:
小から中ぐらいの大きさのジャガイモを皮付きのまま茹でます。そして茹で上がったらそのまま食卓へ出し、各自銘々が皮をむいて食します。またこの皮付き茹でジャガイモにクワルクとオイル(またはバター)を添えて供するドイツ伝統料理もあります。地方によってはオイルに「あまに油(Leinöl)」 を使う所もあります。

次に忘れていけないのは、誰からも愛されているポテトサラダ(Kartoffelsalat )です。

前回の「ドイツ料理のレシピ」コーナーでご紹介いたしましたように、ドイツのポテトサラダを大きく分けると、ビネガーを用いたさらっとしたドレッシングタイプのものと、マヨネーズやヨーグルト、あるいはクワルク(カード)を使ったクリーム状のソースタイプのものがあります。さらにドレッシングをかけるポテトサラダにも、温かいドレッシングをかける温サラダ系と、冷やしたドレッシングをかける冷サラダ系等があります。どちらにしても、ポテトサラダは誰からも愛されているジャガイモ料理です。

皮付きのジャガイモをアルミホイルで包みオープンで焼いたフォーリエ・カルトッフェル(Foliekartoffel)はバター、あるいはクワルクやハーブを加えたクリーム系のソースと一緒に食します。カルトッフェル・ズッペ (Kartoffelsuppe:ポテトスープ)は特に寒い時期によく食されます。またジャガイモ以外にもいろいろな種類の季節の野菜を入れて具だくさんのスープ、アイントプフ(Eintopf)を作ることも多くあります。茹でたジャガイモを食べやすい大きさに切って、玉ネギやベーコンと一緒に油で炒めたブラート・カルトッフェルン(Bratkartoffern)はドイツでは全国どこでも誰からも好まれている一品です。また日本でもおなじみのマッシュポテト(カルトッフェル・ピュレー:Kartoffelpüree)もメイン料理の付け合せとして食べる機会の多いジャガイモ料理です。その他にもクヌーデル(Knödel)あるいはクロス(Kloß)と呼ばれるジャガイモをすりおろして作る団子や、ライベクーヘン(Reibekuchen)あるいはカルトッフェル・プッファー(Kartoffelpuffer)と呼ばれるジャガイモのパンケーキも人気があります。

フォーリエ・カルトッフェル
ブラート・カルトッフェル
クヌーデル (=クロス)

ドイツ・ジャガイモの品種
ドイツでは「ジャガイモ品質等級令」(Verordnung über gesetzliche Handelsklassen für Speisekartoffeln) の中で、ジャガイモの特性を3つの調理タイプに分類し、ジャガイモを販売する際に表示するように義務付けています。

これとは別に、作型(収穫時期)による分類では、5月中旬ごろから8月上旬にかけて収穫される「早生種」(極早生と早生に分ける場合もある)、8月中旬以降10月始めごろまで収穫される「中早生種」、そして9月下旬から10月に収穫される「晩生種」(晩生と中晩生・極晩生に分ける場合もある)とに分けられます。

次に、それぞれの調理タイプ別の主なジャガイモの品種を、どのような料理にどのタイプのジャガイモが向いているのかも含めて、ご紹介いたします。

(1) 煮くずれしないタイプ (Fest kochende Kartoffeln)
煮くずれしないあるいは煮くずれしにくいタイプのジャガイモは、フ ェスト・コッヘンデ・カルトッフェルン(Fest kochende Kartoffeln)と呼ばれます。茹でたり、炒めたり、あるいはオーブン焼きにするなどしても形がくずれず、元の姿を保っているジャガイモです。サラダによく使われることから、ザラート・カルトッフェル(Salatkartoffel)と呼ばれることもあります。このタイプに属するジャガイモの品種には次のものがあげられます。

品種名:Belana / ベラーナ
作型
早生
イモの形
丸から楕円形に近いものまで
芽の深浅
特に浅い
皮の色
黄色
肉色
黄色
特徴
貯蔵性が良く、翌年の春先までその味わいを楽しむことができます。

品種名:Cilena / シレーナ
作型
早生
イモの形
細長
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でなめらかな皮
肉色
薄く黄色味がかった色
特徴
1982年に品種登録されて以来、人気の高いジャガイモです。茹でた後も変色せず、しっかりとした肉質の中になめらかな粘りを持つことからサラダ用ジャガイモの代表格です。ドイツのジャガイモ収穫総量のうち約1割をこのシィレナが占めており、ニーダーザクセン州、ノルトライン・ヴェストファーレン州、ラインラント・プファルツ州で多く収穫されています。

品種名:Linda / リンダ
作型
中早生
イモの形
長めの楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色
肉色
濃い黄色
特徴
小玉のジャガイモで繊細な味わいと香りが良いのが特徴で、最高品質の品種として人気があります。粒の揃った長めのイモは調理する際に大きさの揃った輪切りにできることからポテトサラダに向いています。一定の貯蔵期間を過ぎてもその香りと味わいは変わらず、翌年の始めまで楽しむことができます。

品種名:Nicola / ニコラ
作型
中早生
イモの形
長めの楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でなめらかな皮
肉色
濃黄色
特徴
マイルドな味わいをもつジャガイモで、調理後しばらく時間が過ぎてもその味わいは変わらず、なめらかな粘りを特徴としています。

品種名:Selma / ゼルマ
作型
中早生
イモの形
長めの楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
淡黄色でつるっとした皮
肉色
濃い黄色
特徴
ゼルマもまたサラダ用ジャガイモとして、ドイツでは大変人気のある品種です。

品種名:Sieglinde / ジークリンデ
作型
早生
イモの形
長めの楕円形
芽の深浅
皮の色
黄色でつるっとした皮
肉色
黄色
特徴
ジークリンデはドイツで現在品種登録されているジャガイモの中で最も古い品種です。サラダ用ジャガイモとして変わらぬ人気を博しています。

この他にも、早生種でサラダ用に使われるプリンセス(Princess)、中早生種で長めの楕円形をした大粒のエックスクイーザ(Exquisa)や、つるっとした黄色の皮を持つハンザ(Hansa )なども「煮くずれしないタイプ」のジャガイモに分類されます。これらはサラダの他に、塩茹であるいは皮付き茹でジャガイモ、またブラート・カルトッフェルンなどに適しています。

(2) 煮くずれしにくいタイプ(Vorwiegend fest kochende Kartoffelsorten)
煮くずれしにくいタイプのジャガイモは、フォアヴィー ゲント・フェストコッヘンデ・カルトッフェルン(Vorwiegend fest kochende Kartoffeln)と呼ばれます。品種によって煮くずれしないものや、少々柔らかくなるものまで、その特徴も幅広く、バラエティに富んだ調理に用いることができます。

品種名:Agria / アグリア
作型
中早生
イモの形
長め楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でつるっとした皮
肉色
黄色
特徴
青果用としてだけでなく、加工原料用にも使われる品種です。調理をしても煮くずれすることなく、ほどよい柔らかさになります。

品種名:Arkula / アルクラ
作型
極早生
イモの形
丸楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
淡黄色でつるっとした皮から皺がよったものまで
肉色
淡黄色
特徴
粒揃いの良い品種で、品質の良さを味わうことのできるジャガイモです。

品種名:Berber / ベルベール
作型
極早生
イモの形
長めの楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色で皺が入った皮
肉色
黄色
特徴
トンネル被覆栽培やハウス栽培に適していることから、市場に一番はじめに出回る新ジャガの一品種です。ほどよい濃厚さを食味に持っています。

品種名:Christa / クリスタ
作型
極早生
イモの形
細長
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でなめらかな皮
肉色
黄色
特徴
収量性の良い品種で、おいしい味わいと黄色の肉色を特徴としています。

品種名:Elfe / エルフェ
作型
早生
イモの形
楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でなめらかな皮
肉色
黄色
特徴
「妖精」= Elfe という名のついたジャガイモです。味も繊細です。

品種名:Granola / グラノーラ
作型
中早生
イモの形
丸楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でザラザラとした皮
肉色
黄色
特徴
マイルドなジャガイモ独特の風味を持っています。貯蔵性が良い品種で、翌年4月頃まで販売されます。また備蓄食糧用に適しています。バイエルン州、ラインラント・プファルツ州で生産が盛んです。

品種名:Laura / ラウラ
作型
中早生
イモの形
楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
赤色
肉色
濃い黄色
特徴
粒揃いの良い品種で、フライドポテト用に多く使われます。赤い皮とその姿からジャガイモの世界では「赤の女王」と呼ばれています。

品種名:Leyla / ライラ
作型
極早生
イモの形
長めの楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でつるっとした皮
肉色
濃い黄色
特徴
翌年の始めまで美味しい味が変わらず楽しめます。

品種名:Marabel / マラベル
作型
早生
イモの形
楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でなめらかな皮
肉色
黄色
特徴
収量性の大変良い品種で、調理しても煮くずれず、変色もしないことから、コンビニエンス製品に多く用いられています

この他にも、ロザーラ(Rosara)、クアルタ(Quarta)、ザティーナ(Satina)、ゼクーラ(Secura)、ゾラーラ(Solara)もこの「煮くずれしにくいタイプ」に分類されます。「煮くずれしにくいタイプ」のジャガイモは塩茹でや皮付き茹でジャガイモ、ブラート・カルトッフェルンなどに使用される他に、グラタンやフライドポテト等にも適しています。

(3) 煮くずれやすいタイプ(mehlig kochende Kartoffeln)
調理をすると煮くずれやすいタイプのジャガイモは、メーリッヒ・コッヘンデ・カルトッフェルン(mehlig kochende Kartoffen)と呼ばれます。茹でると粉ふきイモになるのがこのタイプのもので、ホクホクとした特徴をもっています。

品種名:Adretta / アドレッタ
作型
中早生
イモの形
丸楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色
肉色
淡黄色
特徴
このアドレッタは特にマッシュポテトやクリーミーなグラタン、また具だくさんのスープ(アイントプフ)、団子のクヌーデル等の料理に適しています。

品種名:Afla / アフラ
作型
中早生
イモの形
楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色でなめらかな皮
肉色
濃い黄色
特徴
中玉サイズの粒揃いが良く、さらに収量性にも優れている品種で、加工原料用にも使用されています。肉質は柔らかく、調理後の変色も少ないタイプです。味わいが濃厚なことからマッシュポテト等の料理に適しています。

品種名:Likaria / リカリア
作型
中早生
イモの形
楕円形
芽の深浅
浅い
皮の色
黄色で網目状からざらざらしたものまで
肉色
淡黄色
特徴
収穫率が良く、大玉サイズの品種です。ジャガイモ通には大変好まれており、塩茹であるいは皮付き茹でジャガイモに調理すると濃厚な味を楽しめます。また団子やマッシュポテトにも最適です。

品種名:Doris / ドリス
作型
中早生
イモの形
丸楕円
芽の深浅
皮の色
黄色
肉色
淡黄色
特徴
加工原料用、特に澱粉・片栗粉への原料に用いられることが多い品種です。

この他にもアウラ(Aula)、イルムガード(Irmgard)など、多くの品種が「煮くずれやすいタイプ」のジャガイモに登録されています。このタイプのジャガイモはデンプン質を多く含んでいますので、マッシュポテト、ジャガイモで作る団子クヌーデル、またスープやアイントプフに適していて、特にとろみをつけたいスープを作る時には最適です。

さて今回はジャガイモの品種を中心にいろいろとご紹介してきました。きっと一品種でも茹でて味わってみたいと思われていられるのではないでしょうか。残念ながらドイツ産の生鮮ジャガイモは植物検疫法の関係で日本には輸入されておりません。もし何かの機会にドイツへ旅行されることがありましたら、その時には旅先のレストランで出されたジャガイモの品種名をお尋ねになってみてください。季節や土地によってジャガイモの品種は変わってきますが、必ずやその旬の一番美味しいジャガイモを出しているはずです。

ドイツ料理のレシピ」コーナーでは、ジャガイモといろいろな野菜を使ったスープと、ジャガイモと野菜を使ったチーズのオーブン焼きをご紹介しています。簡単にできて、美味しいジャガイモの一品です。寒い時期に体の芯から温まるドイツ料理を一度お試しください。

次回はジャガイモの加工調製品についてお話いたします。

参照