ドイツの食材
ハチミツ

ハチミツ・Honig
最近、日本では体に優しくヘルシーな自然食に対する関心が高まるなか、ハチミツが単なる甘味食品としてだけでなく、ビタミンやミネラルをバランスよく含む健康食品として再び見直されるようになり、疲労回復・病気の際の栄養補給に活躍するほか、強い殺菌性、ダイエットや美肌効果など、様々な効能があることが知られています。

ドイツでも、ハチミツは栄養価が高く健康に良い食品であることはもちろんのこと、無添加の自然食品として、多くの家庭で常備食として愛されています。ドイツのマルクト(青空市場)で必ずと言ってよいほど1軒は見ることができるのがハチミツの販売台です。これは多くの場合、養蜂家あるいは養蜂所の直売で、大中小のビンに詰められた純正ドイツ産ハチミツが種類豊富に並びます。もちろんデパートやスーパーマーケットの食品売り場、あるいはデリカショップなどでも様々なハチミツが販売されています。

朝食のパンに、ミュズリやプレーン・ヨーグルトに入れたり、またいろいろな料理やケーキ等に甘味料として加えたりと、ドイツでハチミツはキッチンの万能選手です。さらにドイツチーズの引き立て役として、またアルコールあるいはノンアルコ−ルのドリンクとミックスして飲まれたりと、ハチミツの食べ方は無限大と言ってよいでしょう。そしてそのハチミツの種類はさまざまで、蜜源によって色や成分、香りそして味が違ってきます。今回は純正ドイツ産ハチミツについてご紹介いたします。また後半ではご家庭で簡単にできるハチミツを使った料理もご紹介いたします。是非一度お試し下さい。

ドイツ・養蜂の歴史
ミツバチは蜜源となる植物から集めた蜜を巣の中に蓄えます。その際にミツバチの体内から出る物質と蜜が合わさり、蜜自体の成分が変化し、そして巣の中で熟成されてできるものがハチミツです。

ミツバチは陽を好む昆虫で、2月から3月にかけて太陽の出た日、気温が10℃以上になると活動を始めます。ミツバチには「訪花の一定性」と呼ばれる習性があり、1つの花に通い始めると、その花が終わるまで決して他の花には目もくれず、通い続けます。春の始めはクロッカスや柳の花などから蜜を集め、4月、5月になると果樹の花や菜の花畑をめぐります。ミツバチは蜜を集めるだけでなく、農作物や果物の花の受粉にも一役、それも大切な役目を担っています。花粉を体につけ、花から花へ移動するミツバチは、農家や果樹園にとっては秋の収穫へつながる大事な訪問者なのです。

ドイツ語でハチミツをHonig(ホーニッヒ)と言います。これはインド・ゲルマン祖語の『黄金色のもの』という意味の言葉に由来しており、文字どおり黄金色に輝くハチミツはその昔から人間と深い関わりを持って歴史を刻んできました。今から1万年以上も昔、すでにハチミツは食用として存在していました。これはスペインの洞窟で発見された石器時代の壁画に「ハチミツを採る女性」の姿が描かれていることからもわかります。ハチミツは栄養価の高い自然の恵として、はるか昔から食されてきたというわけです。

養蜂が始まったのは今から約7000年前頃とも言われ、紀元前3000年頃の古代エジプトではハチミツは神の食べ物として高貴で高価な食品とされていたようです。エジプトのピラミッドから発掘された3000年以上前のハチミツが、まったく変質しておらず、食べることができたという記録があることも、ハチミツの殺菌力の高さを証明しています。古代ギリシャではハチミツは薬としての役目を果たしていました。

中世に入ると、ヨーロッパでは養蜂が特に修道院で盛んになり、ハチミツを採るためだけでなく、ハチが巣を作る際に出す蝋、蜜蝋を採るためにも行われるようになりました。因みにこの蜜蝋は蝋燭の原料として使われます。14世紀に入ると養蜂家の組合が誕生し、この組合を通じて蜜蝋が販売されるようになりました。その後、ドイツ南部地方や東部の森林の多い地域では森林養蜂が、またドイツ北部の地方ではワラ籠を使った養蜂箱でハチの飼育が行われるようになりました。

養蜂家あるいは養蜂業に携る人のことをドイツ語でImker(イムカー)あるいはZeidler(ツァイドラー)と言います。ドイツでは18〜19世紀にかけて多くの養蜂家の協同組合ができ、1925年にこれらの協同組合を統一するD.I.B. = Deutscher Imkerbund e.V. (ドイチャー・イムカー・ブント=ドイツ養蜂協会)が設立され、純正ドイツ産ハチミツの品質保持や販売促進等の振興活動を担ってきました。

現在ドイツでは81,000人以上の養蜂家が、年間約2万〜2.5万トンのハチミツを採っています(統計出典:DIB)。これはドイツで年間に消費されるハチミツ全量の約1/4の量にあたります。因みにドイツ人一人当たりのハチミツの消費量は2003/2004年度で1.2kg(統計出典:BMELV)となっています。CMA(ドイツ農産物振興会)ドイツ本部ではD.I.B.(ドイツ養蜂協会)と協力して「純正ドイツ産ハチミツ」をサポートし、CMA独自の品質検査を実施しています。

ドイツ産ハチミツ・成分
1匹のミツバチはネクター(=Nektar)と呼ばれる花蜜1リットルを集めるために、巣と蜜源を2万回も往復し、その1リットルの花蜜から約300gのハチミツが作られると言われています。またハチミツ1瓶の為にハチがめぐる花の数は200万から700万にものぼるということです。このような気の遠くなるような数字の積み重ねで出来上がるハチミツは栄養価の高い食品として、そして甘く美味しい食品として誰からも好まれて食されています。

ハチミツの主成分である単糖類(ブドウ糖と果糖)は、これ以上分解される必要がないため、胃腸に負担をかけずに素早く吸収されて、エネルギーに変わります。(因みに砂糖の成分はショ糖と呼ばれる多糖類で、体内で一旦ブドウ糖と果糖に分解する過程を経てから吸収されます。)

この他、ハチミツにはビタミン、ミネラル成分、花粉、インヒビン(糖タンパク質ホルモン)、芳香成分、そして数多くの有機化合物等が含まれ、私たち人間の体内循環機能や新陳代謝を助ける働きを持っています。いろいろな種類のハチミツから180以上の栄養素やその他の成分が確認されています。なかでもハチミツに含まれるビタミンは、活性型と呼ばれる少量で効果の高いビタミンで、かつビタミンを効率よく働かせるためのミネラルがバランスよく含まれています。もちろんこれらの成分がハチミツに含まれる量は微量ですが、それぞれが結びつき効能を発揮しているわけです。ハチミツの殺菌力は、主にハチミツ中に僅か0.2〜0.5%含まれているグルコン酸の作用によります。グルコン酸は、ハチミツのpHを酸性に保ち、ビフィズス菌を増やす働きをしています。

植物が生育する気候や土壌質、また植物の種類によってこれらの成分構成も変化してきます。これはハチミツを選ぶ際に味や色だけでなく、そのハチミツの持つ成分によっても選ぶことができることに繋がるわけです。ハチミツに含まれる成分の主なものは次のようになっています。

純正ドイツ産ハチミツ
ドイツでは『Honigverordnung(ハチミツ令)』で、ハチミツのそれぞれの成分の含有量が規定されています。D.I.B.(ドイツ養蜂協会)ではその『ハチミツ令』の基準を上回る厳しい規定を設け、厳しい品質検査を実施しており、合格したハチミツに「Echter Deutscher Honig」(純正ドイツ産ハチミツ)のラベルを貼ることを許可しています。

これらの検査のうち、最も重要なものには、水分量の検査、酵素活性量、HMF(=ヒドロキシメテルフルフラール)含有量の測定、そして顕微鏡検査による不純物の有無の検査、さらに蜜源となった植物の種類や地域の確認検査等があります。

このようにして検査を受けた「純正ドイツ産ハチミツ」は、D.I.B.(ドイツ養蜂協会)の統一された瓶に詰めることができます。ドイツでは消費者の47%がこの瓶について認知し(資料出典:D.I.B.)、「Echter Deutscher Honig(純正ドイツ産ハチミツ)」=品質が保証されたハチミツのレーベルとして定着しています。

D.I.B.の品質検査の他に、CMA(ドイツ農産物振興会)ドイツ本部では、中立の機関として、独自の品質検査を実施し、CMA品質保証マークの使用を許可しています。

D.I.B.(ドイツ養蜂協会)の「純正ドイツ産ハチミツ」の瓶

  1. D.I.B.(Deutscher Imkerbund e.V.)はドイツの養蜂家の団体として、「純正ドイツ産ハチミツ」の品質管理をしています。
  2. CMAの品質保証マーク
  3. 「純正ドイツ産ハチミツ」のマークは100%ドイツ産のハチミツで、さらにD.I.B.の品質基準に合格したものにつけられます。
  4. D.I.B.のコントロール・管理ナンバーは内容物が厳しい規定条件に則していることを意味します。
  5. 養蜂家あるいは養蜂所の名称および住所
  6. ハチミツの種類名称(蜜源となった植物に由来します)
  7. 「Gewähr für Echtheit」(純正品保証)の証票

D.I.B.(ドイツ養蜂協会)の瓶は3種類、500g、250g、そして30gがあります。

ドイツ産ハチミツ・種類
シュロイダー・ホーニッヒ(Schleuderhonig)

シュロイダー・ホーニッヒは、遠心分離機を用いて蜂の巣から蜜を採取したハチミツです。日本では抽出ハチミツ、英語ではExtracted Honeyと呼ばれていますが、ハチミツの中では一番ポピュラーなものと言ってよいでしょう。蜜の種類によって違いはありますが、たいていの場合、採取したてのものは澄んで濃厚な流体をしています。その後時間がたつと、ハチミツの主成分であるブドウ糖が徐々に固まり、白くあるいはクリスタル状に変化し、蜜自体も重い生地状態となります。

ヴァーベン・ホーニッヒ(Wabenhonig)

ヴァーベン・ホーニッヒのヴァーベ(複数:Waben / ヴァーベン)とはハチの巣のことで、日本では巣ハチミツ、英語ではComb Honeyと呼ばれます。これは新しく作られた幼虫のいない巣穴の中に、ミツバチによって貯えられたハチミツで、ハチミツとハチの巣の一部(小片)が一緒に瓶詰めされています。パンやクラッカー、ラスク等に巣も一緒にのせて食べます。 

ブリューテン・ホーニッヒ(Blütenhonig)

ブリューテ=Blüte(複数:Blüten / ブリューテン)とは花のことで、ブリューテン・ホーニッヒとはミツバチがいろいろな花から集めた、花蜜(=ネクター)からできたハチミツの総称です。通常、ミツバチは1つの種類の花から蜜を集めますが、その花の蜜の分泌が少なかったり、花の咲き具合が悪かった場合には他の花からも蜜を集めます。ブリューテン・ホーニッヒは、何種類かの花の蜜が混ざってできた、芳香豊かなハチミツです。日本では百花蜜と呼ばれています。何種類かの花の蜜が混ざってできるので、味、香り、色など風味は一定ではありませんが、一般的に色の淡いものは風味が穏やか、色が濃くなるに従って、クセが強くなります。

花蜜ハチミツのうち、1種類の花の蜜から集められたハチミツ(いわゆる単花蜜)は、蜜源となった花の種類によって分類されます。クレー・ホーニッヒ(Kleehonig)は、日本でもお馴染みのレンゲのハチミツで、優しい香りと上品な味が多くの人から好まれています。ドイツでは、マイルドな味わいのラップス・ホーニッヒ(Rapshonig)、菜の花のハチミツも広く知られています。この他、レーベンツァーンホニッヒ(Löwenzahnhonig)はタンポポのハチミツ、リンデン・ホーニッヒ(Lindenhonig)は菩提樹の花のハチミツ、ロビーニエン・ホーニッヒ(Robinienhonig)はアカシアのハチミツで、アカーツィエン・ホーニッヒ(Akazienhonig)とも呼ばれます。ハイデ・ホーニッヒ(Heidehonig)はヒースの花のハチミツ、エーデルカスターニエン・ホーニッヒ(Edelkastanienhonig)は栗の花のハチミツ、ゾンネンブルーメン・ホーニッヒ(Sonnenblumenhonig)はヒマワリの花のハチミツなど、ドイツにはさまざまなハチミツがあります。

これらの単花蜜のハチミツは、それぞれの香りや味に花の特徴が顕著にあらわれ、さらにその花の群生地でのみ採取されますので、地方色の濃いハチミツとして好まれています。それぞれの花も「ハチが訪れる花」と言う意味からトラハト・プフランツェ(Trachtpflanze)という総称でも呼ばれています。

ホーニッヒタオ・ホーニッヒ(Honigtauhonig)

ドイツで珍重されるハチミツにホーニッヒタオからできたハチミツがあります。タオ(Tau)は「露」と言う意味で、ホーニッヒタオとは木々の樹液や木々に寄生する昆虫が出した甘い分泌物を意味しています。これをハチが集めてハチミツとするわけです。別名、ヴァルト・ホーニッヒ(Waldhonig)、森のハチミツとも言われ、モミの木(タンネンバウム=Tannenbaum)や松(キーファー=Kiefer)等があります。日本では「甘露ハチミツ」、英語ではHoneydew Honeyと呼ばれています。このハチミツはミネラル分を多く含んでおり、花蜜のハチミツより濃い色でスパイシーな香りがする、白濁の少ないものです。

ドイツ・ハチミツを使った料理
ハチミツはいろいろな料理に広範囲に利用できる食材です。甘味料としてのみだけでなく、私たちの毎日の生活に必要なミネラルや酵素など多くの成分を含む食材として、健康的で美味しい料理を演出します。ここでハチミツを使った料理や飲料を簡単にご紹介いたしますので、是非一度お試しください。

ハニー・ミルク

材料(4人前):
卵黄4個、ドイツ製エッグリキュール60ml、ドイツ産ハチミツ(菜の花)大さじ2、牛乳700ml、アマレット30ml、イチジク1個 

作り方:
卵黄、エッグリキュール、ハチミツをハンドミキサーあるいはホイッパーで混ぜ合わせます。その中へ熱くした牛乳をゆっくりと混ぜながら加え、最後にアマレットで味を調えます。グラスに注ぎイチジクの切ったものを縁に飾り出来上がりです。

イチゴシェイク

材料(4人前):
イチゴ200g、牛乳500ml、バニラアイスクリーム4球(アイスクリームディッシャーですくったもの)、ドイツ産ハチミツ大さじ2、メリッサ(西洋ヤマハッカ)少々

作り方:
イチゴは水洗いをして、飾り用に4個を取り分けておきます。残りのイチゴはヘタをとり、よくつぶしペースト状にします。ここへ牛乳とハチミツを加え混ぜ合わせ、バニラアイスクリームをさらに加えてシェイクします。グラスに注ぎ、残しておいたイチゴとメリッサを飾り出来上がりです。メリッサの代わりにミントの葉を飾っても良いでしょう。

ハニー・ポテト

材料(4人前):
新ジャガ(煮くずれしないタイプ)1kg、菜種油大さじ2、花蜜のハチミツ小さじ1、白胡麻大さじ2、塩小さじ1/2、赤唐辛子1本

作り方:
新ジャガは水洗いをして皮ごと少々硬めに茹でます。この時、茹ですぎないようご注意ください。茹で上がったら皮をむき、2等分にしておきます。大き目のボールに菜種油、ハチミツ、白胡麻、塩を混ぜ合わせ、この中へジャガイモを入れ、全体に蜜をまぶします。天板にジャガイモをのせ、予熱をかけたオーブン180℃で約15分、1、2度返しながら焼きます。種を抜いて薄く輪切りにした赤唐辛子を途中で上にのせて焼き上げます。白胡麻入りの蜜は足りないようでしたら、多めに作ってお試しください。ハチミツの甘さと唐辛子の辛さがマッチした、肉料理などの付け合せにお薦めの一品です。

アップルリング、ハチミツとアーモンドのソース添え

材料(4人前):
リンゴ4個、ドイツ産ハチミツ(菜の花)10g、薄力粉250g、白ワイン250ml、卵2個、塩小さじ1/2、アーモンドブランチ大さじ3、菜種油(フライ用)

作り方:
薄力粉、ワイン、卵黄と塩をボールの中で混ぜ合わせ、ホイッパーで泡立てた卵白を加え生地を作ります。リンゴは皮をむき、芯を上部から芯抜きでくり抜き、輪切りにします。このリンゴに先の生地をつけ、熱した油で揚げます。キツネ色になったら取り出して、よく油を切ります。アーモンドブランチはフライパンで空煎りし、ここへハチミツを加え溶かします。揚げたリンゴを皿に盛りつけ、上からハチミツソースをかけて供します。

ローストチキン(ハチミツとローズマリーの甘蜜がけ)

材 料:
鶏1羽(1.2〜1.5kg)、塩、胡椒、ローズマリー(フレッシュ)1本、ローズマリー(乾燥)大さじ1〜2、ハチミツ大さじ2、マスタード(中辛)小さじ2、レモン汁大さじ1

作り方:
鶏は中側と外側を水洗いし、水分をふき取ります。塩と胡椒を鶏によくすりこみ、天板にのせて175℃のオーブンで約1時間15分焼きます。フレッシュなローズマリーは葉を摘み、みじん切りにして、ハチミツ、マスタード、レモンの絞り汁、さらに乾燥のローズマリーと混ぜ合わせ甘蜜をつくります。これを、焼き出して1時間経ったころから、何回かに分けて鶏に塗り、焼き上げます。焼き始めて30分程経ったときに、ジャガイモ、ニンジン、長ネギの切ったものを鶏のわきに置き、一緒に焼いて付け合せとします。クリスマスに一度お試しください。

ブルーチーズ、洋梨添え

材料(4人前):
ドイツ産ブルーチーズ400g、洋梨4個、ドイツ産ハチミツ大さじ2、イタリアンパセリ(飾り用)

作り方:
チーズはスライスしてオーブンの上段、あるいはオーブントースターで軽く焼きます。洋梨は水洗いをして食べやすい薄さのくし型に切り、芯をとります。この洋梨を鍋に入れて弱火にかけ、上からハチミツをかけてまぶします。チーズを皿に盛り、上に洋梨をのせ、イタリアンパセリを飾り出来上がりです。簡単にできるおしゃれな一品です。

今回はドイツ産のハチミツについてご案内してまいりました。「ドイツ料理のレシピ」コーナーではハチミツを使ったハニーケ−キと、チキン料理の一品をご紹介しています。是非お試しください。

参照