キルシェン(Kirschen)
ドイツ語でチェリー(サクランボ)のことをキルシェ(Kirsche)、複数形でキルシェン(Kirschen)と言います。このキルシェには甘い実のジュース・キルシェ(Süßkirsche : スィートチェリー=甘果桜桃)と、日本ではあまり耳にしない酸味の強いザワー・キルシェ(Sauerkirsche : サワーチェリー=酸果桜桃)の2種類があります。私たちが普段食べているものはスィートチェリーで、サワーチェリーは日本ではあまり生産されていないとのことです。ドイツではこのサワーチェリーもスィートチェリーとほぼ同量収穫されており、2006年度のドイツにおけるチェリーの総収穫量6.8万トンのうちスィートチェリーは3.1万トン、そしてサワーチェリーは3.7万トンの収穫量となっています(統計出典:ドイツ連邦統計局)。
またドイツでは、スィートチェリーとサワーチェリーとを交配して作られたバスタード・キルシェ(Bastardkirsche)と呼ばれるチェリーも生産されています。
チェリーの歴史は古く、野性種のものはすでに石器時代から食されていたようです。栽培種のチェリーはアジア西部に位置する小アジア(アナトリア半島:地中海、黒海に囲まれている地域)出身と言われ、紀元前のローマ時代に黒海沿岸からローマへもたらされ、その後ドイツやその他のヨーロッパ諸国へと普及していきました。現在ドイツでは北から南まで全国的にチェリーが栽培、収穫されています。スイートチェリーは特に南部、バーデン・ヴュルテンベルク州で多く収穫されており、2006年度で約1.4万トン、ドイツでの総収穫量の約50%近くがこの1州で収穫されています。またサワーチェリーの収穫量の多い地域は、ラインラント・プファルツ州の9,800トンをトップに、ザクセン州、テューリンゲン州と続きます(統計出典:ドイツ連邦統計局)。
ジュース・キルシェン(スィートチェリー)
スィートチェリーはその紅色が深くなるにつれ、実の熟しも増し、またその香りも高くなります。早い地域では5月下旬から、多くの地域では6月の初め頃から収穫が始まり、夏いっぱい収穫されます。店頭で販売されるチェリーは軸のついたもので、光沢のある皮には傷がないものが要求されることから、チェリーの実は丁寧に手で摘まれていきます。
スィートチェリーは、実が柔らかいヘルツ・キルシェン(Herzkirschen)と呼ばれる種類と、実が硬めのものでクノルペル・キルシェン(Knorpelkirschen)と呼ばれる種類に分けられます。因みにヘルツとはハートのこと、クノルペルとは軟骨のことを意味しています。ちょっと実のしまった歯応えのあるチェリーを「軟骨」に結びつけるのはユニークな感じがします。
ザワー・キルシェン(サワーチェリー)
サワーチェリーはスィートチェリーより少し遅れて旬を迎え、6月下旬から7月上旬にかけて収穫が始まります。サワーチェリーにはスィートチェリーとほぼ同程度の果糖が含まれていますが、果実酸の含有量が高く、酸味が強いため、生で食べられることはあまりありません。ジャムやコンポート、ジュース、またケーキやタルトの具材等に本領発揮しており、多くが調製品へと加工されます。よってその収穫方法も簡単で、多くの場合、機械で木を揺すり、枝から実を振るい落とす方法で収穫されています。
クルミ入りサワーチェリー・ジャム(Sauerkirschenkonfitüre mit Walnüssen)
材 料:
サワーチェリー1kg、ジャム用砂糖1kg、クルミ100g、キルシュ・ヴァッサー(キルシュリキュール)40ml
作り方:
サワーチェリーは水洗いをして軸をはずし、種抜き器で種を取り細かくきざみます。鍋の中でチェリーと砂糖をまぶし、かき混ぜながら火にかけ、プツプツとしてきたら4分ほどそのままさらに煮ます。この時焦げないように、かき混ぜなら煮てください。火からおろしたジャムにみじん切りにしたクルミとキルシュ・ヴァッサーを加えて出来上がりです。ジャムは熱いうちにビンに詰め、蓋をしましょう。ジビエ料理のソースとしてもマッチするジャムです。
ドイツにはチェリーを使ったスペシャリティーがいろいろあります。その中でも世界中に愛好者を持つものにキルシュ・ヴァッサー(Kirschwasser)あるいはキルシュ・ガイスト(Kirschgeist)と呼ばれるチェリーのリキュールがあります。特にバーデン・ヴュルテンベルク州のシュヴァルツヴァルト(黒い森)地方のものが広く知られています。このキルシュ・ヴァッサーは生で飲むだけでなく製菓材料としても多く用いられており、日本ではキルシュと呼ばれてお菓子を作る際の必須アイテムの一つになっています。またキルシュ・ヴァッサーとキルシェ(チェリー)をふんだんに使って焼いたシュヴァルツヴァルト・キルシュトルテ(Schwarzwald Kirschtorte)はシュヴァルツヴァルト地方の伝統あるお菓子として、広く誰からも愛されるドイツケーキのスペシャリティーです。
キルシェ(チェリー)の美味しいアドバイス
* チェリーは収穫後2〜3日のうちに食べましょう。
* 軸が新鮮な緑色でピンとしっかりしているものが鮮度の良いものです。
* 新鮮なチェリーを種ごと冷凍すると約8ヶ月は美味しく楽しむことができます。必要な時に必要な分量を解凍して、ケーキや料理にご利用ください。
* 新鮮なチェリーの種を種抜き器で取る場合、チェリーを数分間冷凍庫へ入れて、実をほんのちょっと硬めにしておくと、果汁のロスが少なくて種が抜けます。お薦め技です。
プフラウメン(Pflaumen)
ドイツのシュタイン・オプスト類(核果類)の中でチェリーと肩を並べる代表選手がプラムです。ドイツ語でプラムをプフラウメ(Pflaume)、複数形でプフラウメン(Pflaumen)と言います。日本で言う「スモモ」や「梅」の仲間で、その種類もいろいろとあります。
プラムは光沢のある青紫の色をした丸い実で、熱調理をしてもその特徴である柔らかくジューシーな果肉を保つことから、そのまま生で食する他に、ケーキの具材として、またビン詰、缶詰、プラムピューレーなどに加工されています。種を抜くのが難なことから、家庭でプラムを調理する場合、下準備に少々時間がかりますが、出来上がった美味しさを思うと、それもいとわない手間と言えるでしょう。
このプラムもチェリーと同じように、紀元前古代ローマ時代に地中海沿岸の小アジアからヨーロッパへもたらされたと言われています。ドイツでは全国各州で生産収穫されており、その収穫量もプラムとその仲間のクエッチを合わせて約5.1万トン、さらにミラベルとグリーンゲージと呼ばれるプラムの仲間も計約5,500トン収穫されています(統計出典:2006年度、ドイツ連邦統計局)。
濃厚な果肉と果汁を持つプラムとその仲間は生で食される他に、プラムケーキ(プフラウメン・クーヘン=Pflaumenkuchen)やジャム、ピューレー(プフラウメン・ムース=Pflaumenmus)、また肉料理のソースに、あるいはチーズの脇役として大活躍し、多くのファンを魅了しています。ここでプラムとその仲間を、いくつかの簡単レシピと合わせてご紹介してみましょう。
写真:プラムケ−キ(Pflaumenkuchen)
ブリーチーズ、プラムの赤ワインソース添え
Brie mit Rotwein-Pflaumen
材料(4人前):
プラム500g、マルメロ・ゼリー(ジャム)大さじ4、赤ワイン(中辛口)大さじ6、グリーンペッパー(ピクルス)小さじ1、ジンジャー(粉末)少々、ドイツ製ブリーチーズ200g
作り方:
生のプラムは水洗いをして、種を取っておきます。鍋にマルメロ・ゼリーと赤ワインを入れ火にかけかき混ぜながら少々煮つめてから、プラムを加えさらに2〜3分煮ます。そしてグリーンペッパーのピクルスを加えジンジャーで味を調えて出来上がりです。このプラムソースを食べやすい厚さに切ったドイツ製ブリーチーズに添えて召し上がってください。
ツヴェッチェン(Zwetschen)
ツヴェッチェン(Zwetschen)はプラムに属する果物で、そのフランス語名を用いて日本ではクエッチと呼ばれています。日本ではあまり聞き慣れない果物ですが、ドイツではポピュラーなプラムの一つです。また地方によってはツヴェチゲ(Zwetschge)とも呼ばれています。
外見は楕円形で先が尖っているのが特徴で、たいていの品種は濃い青色をしています。また果肉がしっかりと引き締まっていることからケーキに最適で、形が崩れることなく、きれいに焼き上がります。
ツヴェッチェン・シナモンタルト
Zwetschen-Zimttörtcen
材料(4人前):
クエッチ400g、バター120g、砂糖75g、バニラシュガー10g、シナモン(粉末)少々、卵1個、卵黄1個分、薄力粉75g、コーンスターチ75g、オレンジマーマレード大さじ8
作り方:
クエッチは水洗いをして種を抜き、くし型に切っておきます。バター、砂糖、バニラシュガー、シナモン、卵黄をボールの中に入れ、ホイッパーで泡立てます。ここへふるった薄力粉とコーンスターチを加え混ぜ合わせて生地を作ります。この生地を小さいタルト型に入れ、上からクエッチを放射状に円になるようにのせ、予熱をかけたオーブン170〜190℃で15〜20分ほど焼いて出来上がりです。タルトを型から出し、小鍋で少し温めたマーマレードを塗ってつやを出します。クエッチの代わりにプラムで一度お試しになってみてはいかがでしょうか。
レーネクローデン(Renekloden)
レーネクローデン(Renekloden)もまたプラムの仲間のひとつで、日本ではグリーンゲージと呼ばれています。品種によってその大きさも違いますが、たいていのものが大きめの丸い実になります。また外皮の色も黄緑色のものから、濃茶緑のものまであり、熟すると赤みがかってきます。緑色の果肉は甘く芳香豊かです。
写真:プフラウメン(左)とレーネクローデン(右)のコンポート
ミラベレン(Mirabellen)

ミラベレン(Mirabellen)はチェリーと同じぐらいの大きさの実で、3〜5cmの丸く赤みがかった黄色のプラムです。日本ではそのフランス語名からミラベルと呼ばれています。果肉は甘みがあり、ひきしまっています。
写真: ミラベルのシナモン・ヨーグルト添え
Dickmilch-Zimt-Quark mit Mirabellen