ドイツの食材
食肉加工品

食肉加工品・Fleisch- und Wurstwaren
ドイツの代表的な食品はと聞かれれば、何と言ってもまずは「ソーセージ」と答える方が圧倒的に多いことでしょう。また逆に「ソーセージは・・・」と聞かれれば「ドイツ」と答えが返ってくることでしょう。「ドイツとソーセージ」、それは切っても切れない関係にあります。世界にその名を馳せているドイツのソーセージ―その品質の高さ、美味しさ、さらにはそのバラエティに富んだ種類の豊富さが、ドイツ国内はもちろんのこと、世界中のグルメを魅了しています。

ドイツではメツゲライ(Metzgerei)と呼ばれる肉屋やハム・ソーセージ取扱い専門店、そして高級食材店などでは、大きな冷蔵ショーケースをはさんだ、対面式の販売方法が一般的です。販売員がお客の希望や好み、また作る料理などに適したハム・ソーセージを、いろいろなアドバイスをまじえながら販売しています。街中のメツゲライで、ショーウィンドウに並んだ数々のハムやソーセージ、上から吊るされたサラミやヴュルストヒェン(細型や小型のソーセージ)を見ると、足を止めてじっくりと眺めずにはいられません。それはもう私たちをハム・ソーセージの世界へ瞬間移動させるほど魅惑的なものなのです。

もちろん、スーパーやデパートの食品売り場でも、ハム・ソーセージ類には広い販売スペースが設けられています。さらにセルフの冷蔵コーナーにもパック詰めされたハム・ソーセージ類がバラエティ豊富に並び、消費者のニーズに応えています。

ではこのドイツのハム・ソーセージにはいったいどのようなものがあるのでしょうか。今回から3回に渡り、皆様をドイツのハム・ソーセージの世界にご案内いたしましょう。

ドイツの食肉加工品事情
ドイツは世界有数の食肉生産量を誇り、2005年時点で豚肉450万トン、牛肉112万トン(仔牛は含まず)が食肉として生産されています(統計出典:ドイツ連邦統計局)。豚肉では中国、アメリカに次いで世界第三位の生産量です。またドイツ人一人あたりの食肉および食肉加工品の年間消費量は約60kgにのぼります。

ドイツ国内で生産された食肉の約42%がハムやソーセージ等の食肉加工品に調製され、ドイツ国内だけでなく、世界各国の多くの消費者に提供されています。ドイツ製食肉加工品(豚肉)の輸出量は2004年時点で約9万トンとなっています(統計出典:BMELV)。ただし、日本向けの輸出量は約147トンにすぎません(統計出典:ZMP)。日本では家畜伝染病予防法等の関係で、ドイツ製食肉加工品のうち、日本で輸入が許可されているのは加熱処理をした豚肉加工品のみに限られているのです(2007年7月現在)。

ドイツ語でソーセージを一般にヴルスト(Wurst)、細く長めのものや小型のソーセージをヴュルストヒェン(Würstchen)と言います。この他にも、シンケン(Schinken=ハム)類、ジュルツェ(Sülze=アスピック寄せ)類など、多くの種類がありますが、何と言ってもやはりドイツの食肉加工品の代表選手はヴルストでしょう。ヴルストの製造の歴史は中世にさかのぼることができ、すでに1256年のランツフート(Landshut、バイエルン州内の一市)の町の市場規則(Marktordnung)で、「ヴルストは良質の豚肉のみを使って製造すること」という製造方法が規定されていました。

このように何百年という歴史をもつソーセージは、ドイツ国内のいろいろな地方や地域で、その土地伝統の味に発展し、人々に愛され、今日まで営々と受け継がれてきたわけです。それは多くのソーセージに、その土地の名前がつけられていることにも見てとることができます。例えば、日本でもお馴染みの「フランクフルト・ソーセージ」は、ドイツ語でフランクフルター・ヴュルストヒェン(Frankfurter Würstchen)と言い、これはフランクフルト(ヘッセン州)生まれのソーセージです。この他、ニュルンベルク(バイエルン州)生まれのニュルンベルガー・ローストブラート・ヴルスト(Nürnberger Rostbratwurst)や、レーゲンスブルク(バイエルン州)生まれのレーゲンスブルガー・ヴルスト(Regensburger Wurst)など、ドイツにはその土地の名前のついたソーセージがたくさんあります。

ではいったいドイツにはソーセージの種類がどのくらいあるのでしょうか?実にその数、推定でも1,750種があると言われており、ドイツのソーセージは世界でも比類のないバリエーションを誇っているのです。

そしてドイツではこの種類豊富なソーセージをその製造方法によって、ロー・ヴルスト(Rohwurst、非加熱ソーセージ)、ブリュー・ヴルスト(Brühwurst、茹ソーセージ)、コッホ・ヴルスト(Kochwurst、煮ソーセージ)の3種類に分類しています。この3つの違いを知ることは、ドイツ・ソーセージの世界をより一層広げ、ドイツ・ソーセージを美味しく食べることに繋がるのです。そこで今回は、まずロー・ヴルスト(非加熱ソーセージ)について、その製造方法と特徴、そしてその代表的なものをご紹介します。

ロー・ヴルスト(Rohwurst)
ロー・ヴルストのロー(Roh)とは生という意味で、ロー・ヴルストはいわゆる『非加熱ソーセージ』を指します。生の牛肉あるいは豚肉に、脂身、塩、香辛料を加えて作ります。肉と脂身は回転刃のついた専用の機械の中で、それぞれのタイプのヴルストに合わせて、粗挽きや細挽きに挽かれます。そして各々のレシピに従って、塩と香辛料が添加され、豚腸や羊腸等の天然ケーシングや人工ケーシングに充填されます。その後、15〜22度の室温の中で乾燥、熟成させて、出来上がりです。この際に肉から水分が蒸発して、ソーセージが収縮するので、ケーシングには通気性があり、伸縮性のあるものが要求されます。

一部のロー・ヴルストは乾燥・熟成のみで、そのまま製品として出荷されますが、多くのロー・ヴルストは乾燥後、くん煙をかけてスモークされます。その後さらに時間をかけて自然乾燥させ、熟成を進ませるものもあり、その製造方法は様々です。肉の配分比率や挽き方、また添加する香辛料などの種類や分量、さらに乾燥やくん煙にかかる時間など、いずれのヴルストの製造工程も、製品の味や香り、硬さ、そして熟成度を左右する重要なポイントとなります。

ドイツにはロー・ヴルストだけでも500を超える種類があると言われますが、大別すると、パンなどに塗って食べるスプレッドタイプのものと、スライスあるいはそのまま食べるタイプのものとに分けられます。この2つのタイプを分ける大きな違いはそれぞれの品質保持期限で、スプレッドタイプのロー・ヴルストはスライスタイプのものより品質保持期限が短いため、早めに食する必要があります。ただし、スプレッドタイプのヴルストを加熱処理し、ビン詰あるいは缶詰にした製品も作られており、これらは長期保存を可能にしています。

スプレッドタイプのものは、ドイツ語で一般にシュトライヒ・ヴルスト(Streichwurst)、あるいはシュミア・ヴルスト(Schmierwurst)と総称されます。テー・ヴルスト(Teewurst)、シュトライヒ・メット・ヴルスト(Streichmettwurst)は、代表的なスプレッドタイプのロー・ヴルストです。写真:シュミア・ヴルスト(粗挽き、細挽き)

一方、スライスタイプのものはダウアー・ヴルスト(Dauerwurst)あるいはハルト・ヴルスト(Hartwurst)と呼ばれます。ダウアーは「長い時間」あるいは「持続時間」という意味、ハルトは「硬い、ハード」という意味で、その名の通り、このタイプのソーセージは月単位での保存が可能です。スライスタイプの代表選手にはサラミ(Salami)、セルベラート・ヴルスト(Cervelatwurst)、プロック・ヴルスト(Plockwurst)などがあります。以下では、もう少し詳しくご紹介しましょう。

テー・ヴルスト(Teewurst)

テー・ヴルストのテー(tee)は英語のteaを意味します。パン等に塗るスプレッドタイプのソーセージで、ティータイムにカナッペにして、あるいはビールの友としてパンにつけて楽しみます。特にフォルコルン・ブロート(Vollkornbrot:全粒粉パン)に良くマッチするソーセージです。

テー・ヴルストは、豚肉(牛肉との合挽きもあり)と脂身を混ぜて、挽肉にして作ります。挽き方は粗挽きあるいは細挽きのものなど様々で、地方によってその伝統的なレシピを用いることから、全体のバリエーションも豊富です。

多くの種類のテー・ヴルストはくん煙をかけて作られ、ヴルストの持つ力強い味と、ほど良いスモークの芳香は誰からも好まれています。香辛料にはカルダモン、ジンジャー、ハチミツ等を加えるものや、ラム酒につけたジュニパーベリーを加えるものもあります。

メット・ヴルスト(Mettwurst)

メット・ヴルストのメット(Mett)とは、脂身のない豚肉の挽肉のことを言います。メット・ヴルストは豚肉の挽肉を使って作ったソーセージの総称と言えます。写真:ツヴィーヴェル・メット・ヴルスト

メット・ヴルストは、地方によってその姿を変える点に特徴があります。ドイツ南部ではスプレッドタイプのソーセージとして作られ、テー・ヴルストと同じように親しまれています。左写真のツヴィーヴェル・メット・ヴルスト(Zwiebelmettwurst)は、オニオンのみじん切りを加えた、スプレッドタイプのソーセージです。

これに対して、ドイツの北部や東部の地域のメット・ヴルストは、長時間のくん煙あるいは自然乾燥によって、ハ−ドタイプのソーセージとして作られるのが一般的です。そのため、スプレッドタイプのメット・ヴルストはハードタイプのものと区別するために、塗るタイプという意味で、シュトライヒ・メット・ヴルスト(Streichmettwurst)とも呼ばれています。

シュトライヒ・メット・ヴルストの多くは豚肉約60%、脂身と香辛料約35%の配分で作られ、ケーシングに詰めたソーセージを丸一日約15度で乾燥させます。その後12時間程くん煙室でスモークし、最後に再び15度ほどの室温の中で吊り下げて乾燥させて出来上がりです。原料となる肉は粗挽きあるいは細挽きのものがあり、香辛料にガーリックを効かせたものやキャラウェイを加えたものもあります。ニーダーザクセン州東部ブラウンシュヴァイク市出身のメット・ヴルストは、ブラウンシュヴァイガー・シュトライヒ・メット・ヴルスト(Braunschweiger Streichmettwurst)としてドイツ全国に知られています。

一方、ドイツ北部、東部の地域のメット・ヴルストは、豚の挽肉に香辛料を効かせ、乾燥、熟成に長い時間をかけて作られるハードタイプのソーセージです。そのまま食べたり、アイントプフ(具たくさんのスープ)に入れて煮込んで食べたりと、その食べ方もバリエーション豊かです。メット・ヴルストをグリューンコール(キャベツの仲間の野菜)と一緒に調理した一品は、北ドイツの名物料理となっています。

ブレーゲン・ヴルスト(Brägenwurst)と呼ばれるニーダーザクセン州とザクセン・アンハルト州のスペシャリティーも、グリューンコール料理に使われることの多いハードタイプのメット・ヴルストの仲間です。ブレーゲンとはドイツ北部の方言で「脳」あるいは「頭」と言う意味で、以前は牛の脳みそを混ぜて作っていたことからその名前がつけられました。現在は、脳は入れずに豚肉と豚の脂身を挽いたものや、オニオンや香辛料を入れて作られています。マイルドにスモークされたブレーゲン・ヴルストは、脂肪分の多い濃厚な味のヴルストです。写真:グリューンコールとメット・ヴルストの料理

コール・ヴルスト(Kohlwurst)

コール・ヴルストも、その名の通り、グリューンコールの料理によく使われるソーセージで、北ドイツで好んで食されます。コール・ヴルストは1〜2週間の時間をかけてスモークされて、製品になります。煮たり焼いたりはせずに、温める程度で食べるソーセージです。地域によっては、ルンゲン・ヴルスト(Lungenwurst)あるいはルング・ヴルスト(Lungwurst)とも呼ばれています。ルンゲ(Lunge)とは「肺」のことで、豚肉、脂身の他に、肺も混ぜて作ることから、この名前で呼ばれているわけです。香辛料にはコショウ、オニオンをはじめ、オールスパイス(ピメント)やマジョラム、あるいはタイムなど、それぞれの地域のレシピにそったスパイスが使われています。

サラミ(Salami)

スライスタイプのロー・ヴルストの代表格がサラミです。ドイツのサラミには長いものやリング状のもの等があり、その製造方法も地方や地域によって様々です。肉の挽き方も極細に挽くものから粗挽きのものまで、また牛肉、豚肉そして脂身の配分比率や添加される香辛料の違いなど、それぞれのサラミがその特徴を限りなく発揮するよう作られています。

なかにはウイスキーや赤ワインを加えるものなどもあります。さらに胡椒の粒、ハーブ、チーズ、ローストオニオンあるいはプンパーニッケルなどで外側を被覆されているものもあります。果てしないバリエーションが広がっているのがドイツのサラミなのです。

ドイツでは普通サラミは薄くスライスしてパンにのせて食べますが、その他にも皆様よくご存知のピザをはじめいろいろな料理に使われます。今月の「ドイツ料理のレシピ」コーナーではサラミを使ったパイ包み焼きをご紹介しています。一度お試しください。

ラントイエーガー(Landjäger)

ドイツには丸型ではなく、平たく四角形のソーセージもあります。ラントイエーガー(Landjäger)は、15cm程の長さの四角形のダウアー・ヴルスト(Dauerwurst)です。ドイツ西南地方出身と言われていますが、現在は各地で作られ、地方によってレシピも異なります。一般には、牛もしくは豚肉の挽肉、または合挽き肉を使って作られます。ケーシングに充填された後、ケースにきっちりと並べられ、ボードを乗せて、上から圧力をかけます。これによって四角のフォームに出来上がるわけです。室温で3、4日ほど熟成させた後、さらに3、4日吊るして乾燥させます。最後に一日くん煙をかけて出来上がります。手で持って簡単に食べることができるので、おやつとして、またパンと一緒にあるいはビールのおつまみとしても最適なミニサイズのソーセージです。

プロック・ヴルスト(Plockwurst)

プロック・ヴルストは、筋をはずした牛肉と豚肉、脂身を粗く挽いて作られるスライスタイプのソーセージです。他のソーセージ以上に、牛肉の比率が高いことが特徴です。一部の地方のものは自然乾燥のみで完成させますが、通常は3〜4日乾燥、熟成させた後、低温でくん煙をかけます。

味がサラミに似ていることから、ピザなどに使われることも多くあります。また、アウフラウフ(Auflauf)と呼ばれるグラタンや、スフレタイプのオーブン料理の具材としても使われ、スモークの香りが美味しい料理を作り出します。

セルベラート・ヴルスト(Cervelatwurst)

セルベラート・ヴルストのセルベラート(Cervelat)とはラテン語の「Cerebrum・ツェレブルム」という単語から生まれた言葉で、「脳」と言う意味です。以前は豚肉の挽肉に豚の脳みそを混ぜて作っていたことに由来していますが、現在では豚肉と牛肉を合わせて細挽きにし、香辛料を加えて作ります。香辛料には塩、コショウの他にブランデ−漬けされたジュニパーベリーが加えられることもあります。その後、4〜6日ほどかけて乾燥、熟成させた後、くん煙でスモークされます。バラ色に近い明るい色をしたセルベラート・ヴルストはとてもマイルドで繊細な味を持ち、ドイツでは誰からも好まれているソーセージの一品です。

カーテン・ラオホ・ヴルスト(Katenrauchwurst)

カーテン・ラオホ・ヴルストのカーテ(Kate)とは「小屋」のことで、肉を小屋の天井からぶら下げて乾燥させて作ったことに由来しています。昔はその小屋で住人が生活しており、かまどから立ち上る煙で天井からぶら下げた肉がほど良く燻され、ハムやソーセージとなったわけです。

カーテン・ラオホ・ヴルストは豚肉のみを使って作られ、スモークの効いたボリュームのある味が特徴のダウアー・ヴルストです。

因みにドイツ北部出身の生ハム、カーテン・シンケン(Katenschinken)は、伝統ある食肉加工品として広く知られています。

今回は数あるドイツのソーセージの中から、非加熱タイプのロー・ヴルスト、それもほんの一部をご紹介しました。同じ名称で呼ばれているソーセージでも、それぞれの地方、地域によって姿形また製造方法などが違うものも多くありますが、ここではあくまでも一般的な説明とさせていただきました。残念ながら、現時点ではドイツから非加熱の食肉加工品を輸入することはできませんが、輸入解禁の折には、或いはドイツ現地で、是非是非一度ご賞味ください。日本のソーセージとの違いにきっと驚かれることでしょう。

今月の「ドイツ料理のレシピ」コーナーではサラミを使ったパイ包み焼きと、白ソーセージ(ヴァイス・ヴルスト)を使った一品をご紹介しております。白ソーセージはブリュー・ヴルストの仲間に入るドイツのスペシャリティーです。どちらも簡単にできて、美味しい料理です。一度ご家庭でお試しください。

参照