ジュルツ・ヴルスト(Sülzwurst)
ジュルツ・ヴルストのジュルツェ(Sülze)とは、肉や豚皮さらには内臓などをアスピック(ゼリー)で寄せて作る、ヴルストのスペシャリティで、ズルツ(Sulz)とも呼ばれます。ジュルツェには塩漬けされた豚肉あるいは牛肉、仔牛肉、家禽肉などが使われます。あらゆる種類の肉が使われると言っても過言ではないほどで、豚肉と牛肉を合わせて用いることもありますし、豚皮やシュヴァイネ・マスケと呼ばれる豚の頭の肉、さらには内臓を入れて作るものもあります。
ジュルツェの作り方を簡単にご紹介しますと、肉をボイルした後、角切りや拍子木切りにします。白ワインあるいはビネガーを混ぜた肉スープを用意し、これにゼラチンを加えてゼリー液を作っておきます。そして肉を型に入れ、上からゼリー液を流し入れ、冷やし固めて出来上がりです。グリーン系の野菜やニンジン、マッシュルームなどのキノコ類、さらには果物やピスタチオなどを組み合わせて、色合いをきれいに演出しているジュルツェも多くみられます。
ジュルツ・ヴルストは、多くの場合、冷やしたものをスライスして食します。濃厚で酸味のあるアスピックと肉が口の中で混ざり合い、美味しい味の二重奏を奏でます。パーティーの際のオードブルとして、また厚めに切って一品料理として、目からも味わえるヴルストです。
豚のタンを使ったツンゲン・ジュルツェ(Zungensülze)、豚の頭の肉を使ったシュヴァインス・コプフ・ジュルツェ(Schweinskopfsülze)、鶏や七面鳥の肉を使って作るゲフリューゲル・ジュルツェ(Geflügelsülze)など、ジュルツェのバリエーションも広く、また地方色豊かにあります。
ところで、ドイツの食品法規集(Das deutsche Lebensmittel)では、コーンド・ミート(Corned meat)や、プレス・ヴルスト(Presswurst)も、ジュルツ・ヴルストの仲間に属しています。
保存が効く食肉加工品として広く知られているコ−ンド・ビーフ(Corned beef)は、コンビーフとして日本でもお馴染みの食肉加工品で、塩漬けした牛肉を加熱してほぐし、牛脂でまとめ缶詰に詰めたものです。ドイツでもその英語名を使ってコーンド・ビーフと呼ばれることも多いのですが、「ドイチェス・コーンド・ビーフ」(Deutsches Corned Beef)が正しい呼び名です。ただし、ドイツのコーンド・ビーフは缶詰のコーンド・ビーフとは加工方法が異なり、ジュルツェと同じようにゼリー液で牛肉をまとめて作られています。従って、ドイツではコーンド・ビーフはコッホ・ヴルストの仲間に入るというわけです。
スライスタイプのジャーマン・コーンド・ビーフは大きめな長方形をしており、好みの厚さ、あるいは重さでの量り売り販売が一般的のようです。北ドイツ地方の名物料理「ラップスカウス」(Labskaus)は、このコーンド・ビーフに、マッシュポテトを混ぜて作る料理です。「美味しそう」ですね・・・。
プレス・ヴルスト(Presswurst)は豚肉と豚皮を主材料として、豚の胃袋に充てんされているのが一般的です。充てん後に、中身が均等になるようヴルストを2枚の板にはさみ、上から手で圧をかけることから「プレス」の名前がついたようです。
シュヴァルテン・マーゲン(Schwartenmagen)
代表的なプレス・ヴルストとしてあげられるのが、シュヴァルテン・マーゲンです。シュヴァルテンとは「皮」、そしてマーゲンは「胃、胃袋」という意味で、胃袋をケーシングとして用いて肉生地を詰めたものです。肉生地は一度茹でて加熱をした豚肉、豚皮を主材料に、脂身と塩、スパイス類等を混ぜ合わせて作ります。レシピによって、肉の挽き方も粗いものや細挽きのもの、さらには角切りあるいは拍子木切りにした肉片を加えて作る肉生地など様々あります。この肉生地を豚の胃袋に充てんし、茹でて完成です。
シュヴァルテン・マーゲンの呼び方は地方によって、また中に入れる肉の部位によって異なってくるようです。豚の頭の肉(Schweinemaske)や、コップフ・シュヴァルテン(Kopfschwarten)と呼ばれる豚の頭の皮を入れて作るヴルストは、プレス・コップフ(Preßkopf)あるいはプレスザック(Preßsack)とも呼ばれています。このプレスザックはバイエルン地方とフランケン地方のスペシャリティです。さらに牛肉あるいは牛のタン、また豚の心臓を入れて作るものもあります。ただし、豚の血を加えて作るローター・シュヴァルテン・マーゲン(Roter Schwartenmagen)は、ジュルツ・ヴルストではなく、ブルート・ヴルストの仲間に属します。