ドイツの食材
果物・Obst - 秋編

果物・Obst - 秋編
秋です。味覚の秋がやってきました。日一日と店頭に旬の味が増えていくのを見ると心がワクワクしてきます。大地からの贈り物をお腹いっぱい楽しめる季節の到来です。

さて、今春ご紹介しました「ドイツの果物・春夏編」に続き、今回から2回にわたり「ドイツの果物・秋編」をお届けいたします。まずは秋の果物の代表選手、リンゴについてご紹介いたしましょう。晩夏から収穫がはじまる早生種、そして晩秋・初冬にかけて収穫される晩生種までドイツにはいろいろなリンゴの品種があります。リンゴは食物繊維やビタミンC、カリウムなどを供給する栄養価の高い果物として誰からも愛されている果物です。

リンゴと私たち人間との関わり合いは古く、リンゴにまつわる話もいろいろあります。エデンの園でアダムとイブが食べた果物がリンゴだと言われていますし、ウィリアム・テルの伝説の中には、息子の頭にリンゴを乗せ、矢で射抜いたという話が登場します。

さらにアイザック・ニュートンがリンゴの木からリンゴが落ちるのを見て万有引力の理論を考えたと言われています。そして日本にもリンゴについて歌った曲がいくつもあります。リンゴはその昔から親しまれ、私たちと一緒に歴史を歩いてきた不思議な魅力のある果物と言ってよいでしょう。

ドイツでは、リンゴは日常生活に溶け込んでいます。軽食やおやつ用に多くの人のかばんの中に入っているのはこのリンゴです。学校や仕事の休憩時間に、そしてちょっとした待ち時間に、また列車の中でリンゴを丸かじりしている人を本当によく見かけます。アップルケーキなどのお菓子はそれぞれの地方によって、また家庭によって様々なものがあります。さらにジャムやムースに、あるいは料理にも使われます。もちろんジュースをはじめ、アップルワイン、アップルリキュールなどといった酒類にも加工されています。本当に大活躍のリンゴです。

それでは、まずはドイツのリンゴ事情からお話をはじめることにいたしましょう。

ドイツ・リンゴ事情
ドイツ語で、リンゴはアプフェル(Apfel、複数:Äpfel エプフェル)と言います。日本語で「仁果類」と呼ばれるケルン・オプスト(Kernobst)に属する果物です。ケルン・オプストの仲間にはリンゴの他、洋ナシやマルメロ、カリンなどが属しています。また果物のことをドイツ語ではオプスト(Obst)、あるいはフルヒト(Frucht)と言い、これら果物をベーレン・オプスト(Beerenobst)=ベリー類:ブルーベリーやラズベリー等、シュタイン・オプスト(Steinobst)=核果類:サクランボやプラム等、そしてケルン・オプストなどのいくつかの大きなタイプに分けています。

リンゴは、原産地が中央アジアの寒冷地と言われているように、主に寒冷地での栽培が盛んな果物です。ただし温帯で栽培されているものもあります。

ドイツでは国内ほぼ全ての地域で栽培されており、商業栽培のリンゴのみでも、3.2万ヘクタール以上の総作付面積で年間94.2万トン以上が収穫されています(2006年度・統計出典:BMELV)。商業栽培以外で、一般の家庭での収穫や栽培農家の直売や自家用などの数字を入れると年間150万トン以上のリンゴが収穫されていると言われています。リンゴは果物の中では、一人当たりの年間消費量が21.5kgにもおよぶ、消費量第一位の果物です(2006年度・統計出典:ZMP)。

左の図は2006年度におけるドイツ国内における州別の商業栽培されたリンゴの収穫量を表したものです。果物の二大生産州であるニーダーザクセン州とバーデン・ヴュルテンベルク州ではリンゴの収穫量も多く、全国1位、2位を占め、それぞれ約25万トンずつ収穫されています(統計出典:ドイツ連邦統計局)。バーデン・ヴュルテンベルク州のボーデン湖周辺、ニーダーザクセン州とハンブルク州との州境に広がるアルテス・ラントなどがリンゴの産地として有名です。

またドイツはリンゴの輸入も多く、2005年度には約84.6万トンが輸入されました。因みに輸出は同年で約10万トンでした(統計出典:ドイツ連邦統計局)。

なお、青果としてのドイツ産リンゴは植物検疫法の関係で日本には輸入されていません。ただしアップル・ジュースや果物加工調製品として輸入されていますので、一度お試しください。

ドイツでは国内で栽培される果物に栽培規定を設け、高品質で安全な果物を消費者へ提供できるよう、厳しい管理に努めています。果実に直接関係する果樹栽培土壌の管理や、果実収穫後の樹木の管理、そして果実や果樹の病害虫対策をはじめとして、自然や環境に影響の少ない予防剤などの使用など、多岐にわたって決められています。そしてリンゴ生産者と収穫されたリンゴは、中立の立場の第三者機関によって常に検査・管理されています。なお、これら管理の一部にはドイツ農業会議所が当CMA・ドイツ農産物振興会の本部(ドイツ・ボン)と協力して携わっています。

ご存知のように、リンゴは保存の効く果物で、現在では低温保存の方法が以前にも増して発達していることから一年中販売されていますが、秋から冬にかけてが旬の果物です。ドイツでは8月の中旬ごろから、早生種のリンゴの収穫が始まります。

次に、ドイツにはどのような品種のリンゴがあるのか見てみましょう。

ドイツ産リンゴ

リンゴはその長い歴史ゆえに、現在まで多くの品種が生まれてきました。その数は1万とも、2万以上とも言われています。現在ドイツには約1,500種のリンゴの品種があるとされていますが、実際に栽培されているのはそのうち60種前後のようです。リンゴは収穫されすぐに市場に並ぶものと、収穫後ある一定の熟成・貯蔵期間を設け、そのリンゴの特性である味を引き出し「食べ頃」になったものを出荷するものと、品種によって違いがあります。以下ではドイツの主なリンゴの品種をご紹介します。

品種名:ボスコープ(Boskoop)
収穫時期
9月下旬〜10月中旬
賞味時期
11月〜翌4月
食味と果肉
酸味があり、さわやかな味で風味の良いリンゴです。果肉がしまっていて瑞々しさを持つ果実ですが、熟すと柔らかくなります。
19世紀中頃にオランダの南西部の町ボスコープで作られた品種で、大玉のリンゴです。ボスコープはドイツでは大変好まれているリンゴの種類の一つで、そのまま生で食される他に、アプフェル・クーヘン(Apfelkuchen =アップル・ケーキ)やアプフェル・ムース(Apfelmus=アップル・ムース)などの料理用に、またアプフェル・ザフト(Apfelsaft =アップル・ジュース)やアプフェル・シャウムヴァイン(Apfelschaumwein =アップル・スパークリングワイン)などの酒類の加工原料にも使われています。酸味があることから、特にアップル・ムースに適しているようです。10月に収穫されたものを貯蔵、熟成させ、12月頃が最も美味しい食べ頃と言われています。長期保存が効くリンゴの品種です。


品種名:ブレイバーン(Braeburn)
収穫時期
10月中旬
賞味時期
11月〜翌6月
食味と果肉
香りはひかえめで甘いリンゴです。果肉は歯ごたえがあり、しまっています。で風味の良いリンゴです。果肉がしまっていて瑞々しさを持つ果実ですが、熟すと柔らかくなります。
比較的新しいリンゴの品種で、1950年代初めにニュージーランドで生まれました。実が熟するのに時間がかかることから、温暖な気候の地域での栽培に適しています。ドイツでは気候が穏やかなワイン用ブドウの生産地域等で栽培されています。ビタミンCの含有量が他の品種よりも多く、そのまま生で食する他に、サラダ等のリンゴ料理に多く利用されています。


品種名:コックス・オレンジ(Cox Orange)
収穫時期
9月中旬〜下旬
賞味時期
9月下旬〜翌3月
食味と果肉
甘味と酸味が調和していて、リンゴ特有の風味を持っています。また香りも高い品種です。果肉はきめが細かく、しまっていますが、熟すと程よい柔らかさになります。
英国生まれのコックス・オレンジはいろいろな食べ方に適した、ドイツでは良く知られたリンゴの品種の一つです。中玉サイズで粒揃いが良いコックス・オレンジはそのまま生で食べるだけでなく、サラダや煮込み料理、お菓子に使われています。ただし、この果樹は霜や病気に弱いことから、条件の整った地域での生産に限られているようです。


品種名:デルバレスティヴェイル(Delbarestivale)
収穫時期
8月中旬
賞味時期
8月〜10月
食味と果肉
さわやかな香りが持ち味で、マイルドな酸味があります。歯切れの良い白い果肉です。
フランスでゴールデン・デリシャスを交配して作られたまだ新しい品種です。早生のリンゴですが、酸味がマイルドなことから人気があります。


品種名:エルスター(Elstar)
収穫時期
9月下旬〜10月上旬
賞味時期
9月下旬〜翌5月
食味と果肉
軽い酸味があって風味が良く、清涼感を持っています。白黄色の果肉は、ジューシーで歯切れのよさがあります。
エルスターもゴールデン・デリシャスを片親にイングリッド・マリーと呼ばれる品種と交配して作られたものです。1950年代中頃からオランダで研究栽培されるようになり、1975年から各地で商業栽培されるようになりました。アップル・ケーキやアップル・ジュースに適した品種です。


品種名:ガーラ(Gala)
収穫時期
9月中旬
賞味時期
9月下旬〜翌3月
食味と果肉
甘く、軽い芳香のあるリンゴです。硬くしまったクランチな果肉ですが、ジューシーさがあります。
比較的小さ目で生食用として、またデザートに調理されることが多いリンゴです。1930年代はじめにオランダでゴールデン・デリシャスを他種と交配品種改良され、1960年頃から商業栽培が盛んになり、市場へ出回るようになりました。オリジナルのガーラの他に、ガーラ・ロイヤルなどいろいろな種類のガーラがあります。市場に出回るリンゴの中では最も酸味の弱いリンゴとのことで、その甘さから子供たちに人気があるようです。


品種名:グロスター(Gloster)
収穫時期
10月中旬
賞味時期
11月〜翌5月
食味と果肉
緑黄色の果肉はジューシーで酸味があります。
ニーダーザクセン州とハンブルク州との州境にある果物の一大産地として有名な「アルテス・ラント」で、1950年代初頭にグロッケン・アプフェルとリヒァルト・デリシャスと呼ばれる品種を交配させて作られたリンゴです。1969年から市場に出荷されるようになりました。小玉種が比較的多いドイツのリンゴの品種の中では大きめのもので、甘みが弱いのが特徴です。


品種名:ゴールデン・デリシャス(Golden Delicious)
収穫時期
9月〜10月
賞味時期
10月〜翌7月
食味と果肉
甘い香りのする風味の良いリンゴです。軽い酸味があり、しっかりとした歯ごたえのある果肉です。完熟すると柔らかくなります。
日本でもお馴染みのリンゴ、ゴールデン・デリシャスは1890年にアメリカで生まれた品種で、その後、世界各国で導入され盛んに栽培されるようになりました。現在でもリンゴのトップクラスの品種としてその地位を保っており、世界で収穫量第一位のリンゴです。またこのゴールデン・デリシャスを親種として他品種と交配させた数々の新品種が生まれており、リンゴのたね種としても重要な役目を担っています。酸味が弱いことから、生食のほかに、ベビーフードをはじめとしていろいろな料理や菓子などに加工されることも多い、最も好まれるリンゴの品種の一つです。


品種名:イダ・レッド(Idared、英読み:アイダ・レッド)
収穫時期
10月中旬〜下旬
賞味時期
翌1月〜7月
食味と果肉
軽い酸味があります。しまった歯切れの良い果肉は、白いものから少し赤みがかかったものまであります。
1935年にアメリカで生まれた品種です。甘みが弱く、ビタミンCを多く含んでいます。ソースやケーキ類に人気のリンゴです。10月に収穫されたリンゴは2ヶ月ほどの熟成期間を経た後、食べ頃の「旬」を迎えます。


品種名:ジョナゴールド(Jonagold)
収穫時期
9月下旬〜10月中旬
賞味時期
10月〜翌7月
食味と果肉
甘味と酸味が適度に合わさったリンゴです。ジューシーで黄色い果肉は完熟すると柔らかくなります。
ジョナゴールドは世界各国で栽培されており、日本でもお馴染みの品種です。ゴールデン・デリシャスを親種に持つアメリカ生まれのリンゴで、1970年代からヨーロッパに導入され、盛んに栽培されるようになりました。アップフェル・シュトゥルーデル(Apfelstrudel)やその他各種のケーキ類に用いられ、製菓・製パン業者に好まれるリンゴです。ジョナゴールドの仲間にジョナゴレッド(Jonagored)等があります。


この他にもドイツではドレスデン近郊で生まれたピノヴァ(Pinova)、スイス生まれのルビネッテ(Rubinette)、チェコ生まれのシャムピオン(Shampion)等など多くのリンゴの品種が栽培されています。

ドイツのリンゴ料理

リンゴが大好きなドイツ人ですが、それではリンゴをいったいどのように食べているのでしょうか。はじめにお話しましたように「生の丸かじり」は一番シンプルで簡単なリンゴの食べ方ですが、その他にもいろいろな料理やお菓子に利用しています。「リンゴを使った料理」と言われると、きっとどなたもがまずはケーキやお菓子と思われることでしょうが、次にリンゴを使った料理のいくつかを簡単にご紹介いたしましょう。

ブラート・アプフェル(Bratapfel)は焼きリンゴのことで、家庭で作るリンゴのお菓子の中では定番です。秋冬を通して必ず1度は作ると言う家庭が多いお菓子です。

ブラート・アプフェルには、いろいろな作り方がありますが、その一つをご紹介します。まずボスコープやエルスターといった風味の良いリンゴを選びます。リンゴの芯をくり抜き、ナッツ、干しブドウ、マジパンを混ぜ合わせたものを詰めます。そして200℃のオーブンで30分程焼いて、出来上がりです。温かいバニラソースあるいはアイスクリームを添えて食します。簡単で美味しい焼きリンゴです。

アプフェル・プファンクーヘン(Apfelpfannkuchen)はアップルのパンケーキです。ジューシーなリンゴがパンケーキの中で踊っています。おやつだけでなく昼食や夕食のメニューの一品としても楽しめます。

また皆様よくご存知のアップル・ケーキのことを、ドイツではアプフェル・クーヘン(Apfelkuchen)と言います。それぞれの地方や、それぞれの家庭に特徴あるアプフェル・クーヘンがあると言っても過言ではないほど、いろいろな種類があります。すでに「ドイツ料理のレシピ」のコーナーの中でも「マジパン入りアプフェル・クーヘン」をご紹介していますが、今月もクラシックなアプフェル・クーヘンの作り方をご紹介しています。是非一度お試しください。

このようなお菓子以外にもリンゴを使った料理はたくさん登場します。ライン地方とニーダーザクセン地方の伝統ある郷土料理「ヒンメル ウント エルデ(Himmen und Erde)」は、ジャガイモとリンゴを混ぜ合わせて作る料理です。また鶏肉一羽を使って作る料理では、リンゴを詰め物として良く使います。肉類とリンゴの取り合わせは良く、リンゴのさっぱりとした味と酸味が肉の味を引き立たせ、肉料理を魅惑ある一品に演出しています。またリンゴのシャキシャキ感を利用して、サラダにも使います。リンゴとニンジンのサラダや、リンゴとセロリのサラダなどコンビネーションも様々です。またリンゴを細切りにしてポテトサラダに加えたりと、リンゴはいろいろに活躍できる果物です。

今月の「ドイツ料理のレシピ」コーナーではリンゴで作る美味しいお菓子、「アプフェル・クーヘン(アップル・ケーキ)」と「アップル・グラタン」の二品をご紹介しています。是非一度ご家庭でお試しください。

次回はドイツの洋ナシを中心に「ドイツ果物・秋編」第2回をご案内の予定です。

参照