収穫には特別な収穫用の機械を用い、葉を切り落としながら、根だけを掘り起こし、土を取り払い、貯蔵器の中に入れていきます。葉は畑に残されて施肥となり、土に還ります。あるいは家畜の飼料になる場合もあります。
収穫された甜菜は直ぐに製糖工場へ運ばれる場合と、畑の一角の集積所へ積まれ、出荷されるのを待つ場合があります。いずれにしても工場へ出荷される前には、甜菜についた土を再度、取り除きます。なるべく土が畑に残るように配慮されているわけです。
甜菜は、収穫後も根に蓄えた糖分を使って呼吸をしており、出荷待ちの間に徐々に糖分が減少していきます。そのため、大規模な集積所や貯蔵庫では換気に努め、庫内温度を低く保つよう、温度変化にも注意が配られています。
■製糖工場
甜菜の根部は、砂糖原料として製糖工場へ出荷されます。因みにドイツ語で製糖工場のことをツッカー・ファブリック(Zuckerfabrik)あるいはツッカー・ラフィネリー(Zuckerraffinerie)と言います。
製糖工場へ到着すると、まず水できれいに洗浄されます。そして裁断機にかけられ、細長くカットして、糖分を抽出しやすくします。このカットされた細長い切片をリューベン・シュニツェル(Rübenschnitzel)と呼びます。
次に、このリューベン・シュニツェルは、高さ約20mのエクストラクツィオンス・トゥルム(Extraktionsturm)と呼ばれる抽出塔の中で温水をかけられながら、下部から上部へと移動していきます。熱を加えることにより細胞が柔らかくなり、細胞液の中に含まれる糖分が水のなかへ抽出されていくわけです。微生物の汚染防止にも効果的です。この工程でリューベン・シュニツェルから99%以上の糖分が抽出されるということです(資料:Zuckerverbände, Bonn)。なお糖分を抽出した後のシュニツェルは、脱水、乾燥、成形して、質の高い家畜飼料になります。
こうしてできた糖分抽出液を抽出塔の下部から取り出します。この抽出液はドイツ語でRohsaft(ロー・ザフト)、英語ではRaw juice(ロージュース)と呼ばれ、ダークグレーの液体には85〜87%の糖分が含まれています。残り13〜15%の非糖分物質をロー・ザフトから取り除いていくのが、次のザフト・ライニグング(Saftreinigung)と呼ばれる浄化工程です。この浄化工程ではロー・ザフトにカルク・ミルヒ(Kalkmilch、英語:Milk of lime)と呼ばれる石灰液と炭酸ガスを加え、非糖分物質と結合させて、ろ過機で除去していきます。ここでダークグレーの色をしたロー・ザフトは、きれいに澄んだ明黄色の液体となり、糖分の純度は90%前後にアップします。これをデュン・ザフト(Dünnsaft)、英語ではThin juice(シンジュース)と呼んでいます。
次に、フェアダンプフ・シュタツィオン(Verdampfstation)と呼ばれる工程で、水分を蒸発させる作業を行います。澄んだ液体デュン・ザフトを蒸発器に入れ、その含有糖分が65〜70%になるまで水分を気化させ、濃縮させます。
因みにこの工程では蒸発器を何台も隣通しに並べ、順繰りにデュン・ザフトを通していきます。蒸発器を直列に並べるのは、一台目で排出された熱蒸気を、二台目を熱するために使用するためで、これを並んだ蒸発器に順送りしていきます。エネルギーの節約、省エネが考えられているというわけです。この工程を経て濃縮された液はディック・ザフト(Dicksaft)、英語ではThick juice(シックジュース)と呼ばれています。
濃い金茶色をした糖液ディック・ザフトはコッホ・シュタツィオン(Kochstation)と呼ばれる次の工程で、さらに水分を気化させ、結晶化させます。この際、糖がキャラメル化しないように釜内の圧力は下げられ、温度も65〜80度に抑えられています。こうして生まれるのがフュル・マッセ(Füllmasse)と呼ばれる、糖の結晶とシロップ(糖蜜)が混ざったどろりとした糖液です。因みに日本ではこれをマスキットと呼ばれています。
このフュル・マッセを攪拌器に入れ、冷やします。この際にも糖の結晶化は進みます。そしてこれを遠心分離機にかけ、糖の結晶とシロップに分離します。
この段階では水分が多いウェット状態ですから、結晶を温風乾燥後、冷却し、最後に、表面に付着したシロップを落とすと、白い砂糖が出来上がります。
この出来た砂糖を再度溶かし結晶化させると、高品質の砂糖「ラフィナーデ」(Raffinade)となります。ドイツではこのラフィナーデが一般に用いられている砂糖です。
一方、遠心分離器で分離されたシロップにはまだ砂糖が含まれているため、コッホ・シュタツィオンへ戻して、結晶化させ、遠心分離機にかけて、再度、砂糖を回収します。最終的に残ったシロップをメラッセ(Melasse)と言います。日本ではこれを廃糖蜜と呼んでいます。このメラッセには水分、非糖分物質とともにまだ糖分が50%ほど残存していますが、これ以上は結晶化しないことから、砂糖精製の際の副産物として家畜の飼料に加工されたり、製パン用酵母の製造原料などに使用されたりしています。
毎日、コーヒーや紅茶に入れたり、調理に使ったりしている砂糖が、さまざまな工程を経て作られていることがご理解いただけたと思います。ドイツでは多くの種類の砂糖が製造販売されています。次回はこれら砂糖の種類についてご案内いたします。