このようにEU各国や日本において年々生産量が増加しているクリーム製品ですが、ドイツではどのようなクリームが製造されているのでしょうか。これからその種類をご紹介いたします。
クリームのことをドイツ語でザーネ(Sahne)あるいはラーム(Rahm)といいます。日本では普通、日常ではただ単に「クリーム」と言うよりは、「生クリーム」と言うことの方が多いようですね。
ではこの「ラーム」と「ザーネ」はどう違うのでしょうか。両方の言葉ともドイツでは日常よく使われており、簡単に使い分けに線を引くことはちょっと難しいようです。「ラーム」は11世紀頃から、「ザーネ」はその後14世紀頃から使われるようになった言葉で、「ラーム」にはクリームという意味だけでなく、乳脂という成分的な意味もあります。どちらかと言うと、製品化される前の「クリーム」は「ラーム」と言う場合が多いのに対して、製品となったクリームを「ザーネ」と言うのが一般的のように思われます。
ただし、クリームを使って作る料理の名称にはラーム・ズッペ(Rahmsuppe:クリームスープ)と言ったようにラームが付いたものが数多くあります。いずれにしても、どちらの単語が聞こえてきても、「クリームのことを言っているんだ」と、お考えください。
牛乳を製造する段階で遠心分離機にかけられた生乳が、ラームとマーガーミルヒ(Magermilch:脱脂乳)に分けられることは前回ご紹介しましたが、この際のラームがいろいろなクリーム製品やバター、またその他の乳製品へ姿を変えていくわけです。
ドイツのクリーム(=ザーネ)は大きく2つの種類に分類することができます。1つ目は、ラーム(場合によっては牛乳)に乳酸菌を添加して作る、サワー・クリーム製品で、ドイツ語でザウワー・ラーム・プロドゥクテ(Sauerrahmprodukte)と呼びます。2つ目は、ラームに何も添加しないで製造するクリーム製品で、ズゥース・ラーム・プロドゥクテ(Süßrahmprodukte)と言います。ズゥース(Süß)とは甘いと言う意味ですが、別に砂糖が入っているわけではありません。ザウワーの「酸味のある」という言葉に対して、普通のクリームを「甘い・ズゥース(Süß)」と呼んでいるわけです。
そしてこの2種類のクリーム製品の中にも、乳脂肪分の含有量によってさらにバリエーションあるザーネが作られています。
クリーム製品:ズゥース・ラーム・プロドゥクテ(Süßrahmprodukte)
シュラーク・ザーネ(Schlagsahne)
ドイツ語でシュラーゲン(schlagen)とは打つ、たたく、打ち付けると言った意味を持つ言葉で、シュラーク・ザーネとはホイップ用のクリームのことを言います。このクリームの含有乳脂肪分は30%以上となっています。
シュラーク・ザーネは乳製品の女王と言ってもよいほど、誰からも好まれているクリームで、ホイップしたものをケーキやデザートにデコレーションするのをはじめ、ホイップせずにクリームとして数々の料理やソースに加えられ、その料理にコクを出し、より一層美味しいものへと演出する役目を担っています。
特に、ホイップしたクリームをケーキに添えて食べることはドイツ人のクリームの楽しみ方の中でも、至福のものと言ってもよいでしょう。カフェやコンディトライ(Konditorei:ケーキ屋)などに座り、お茶の一時を楽しむ際に、ケーキを注文した後「Aber bitte mit Sahne : アーバー、ビッテ ミット ザーネ」と言う言葉を、よく聞きます。「クリームもいっしょにね!」と言うわけです。老若男女を問わず、ニコニコしながらクリームをたっぷりつけたケーキを口に運ぶ姿は、見ている者誰をも幸せな気分にしてくれます。
ドイツではこのシュラーク・ザーネをスプレー缶(Sprühdose:シュプリュー・ドーゼ)に充てんし、上部を押すとクリームがホイップされて出てくるという、使いやすい商品も販売されています。
シュラーク・ザーネ・エクストラ(Schlagsahne extra)は、乳脂肪分含有量35%以上のシュラーク・ザーネのことをいいます。
カフェー・ザーネ(Kaffeesahne)
カフェー・ザーネのカフェーとはコーヒーのことですので、訳すとコーヒー用のクリームとなります。ただし、コーヒー用としてだけでなく、脂肪分控えめのクリームとして調理にも使われています。
カフェー・ザーネは乳脂肪分が10〜15%含まれ、多くのものが、超高温短時間殺菌法、あるいは容器に入れて高温長時間殺菌するシュテリリジィールング(Sterilisierung)で加熱処理されていますので、常温で長期保存が効きます。ただしこのクリームは光に感じやすいことから、開封したものを長時間テーブルの上などに放置しないよう注意が必要です。
クレーメ・ダブル(Crème Double)
乳脂肪分40〜43%含有のクリームが、クレーメ・ダブルと呼ばれる固めのクリームです。製品によっては43%以上の乳脂肪分を持つものもあります。脂肪分が高いにもかかわらず、シンプルな味であることから、料理の持ち味を壊すことなく、その料理にコクを出す脇役として活躍しています。
サラダのドレッシングやスープ、ソ−ス類、肉料理や煮込み料理などに、またデザート類など、キッチンの強い見方として幅広く使われています。特にソース類にコクを出し、とろみをつけるには最適なクリームです。
サワー・クリーム製品:ザウワー・ラーム・プロドゥクテ(Sauerrahmprodukte)
ドイツ語でザウワー(Sauer)とは酸っぱい、あるいは酸味のあると言う意味で、ザウワー・ラーム・プロドゥクテは酸味のあるクリーム、サワー・クリーム製品のことを言います。含有される乳脂肪分によって、幾つかの種類があります。メーカーによって製造方法に違いはありますが、基本的には加熱殺菌処理をしたラームあるいは牛乳に乳酸菌を添加し、20〜40度ぐらいの温度のタンクの中で発酵(フェルメンタツィオン:Fermentation)させて作ります。マイルドな酸味を持つクリームです。
ザウレ ・ザーネ(Saure Sahne)
ザウレ ・ザーネのザウレとは、酸味のあるという意味のザウワー(Sauer)が語尾変化したもので、乳脂肪分10〜15%を含有するサワー ・クリームのことを言います。ザウワー ・ラーム(Sauer Rahm)と呼ばれることもあります。
ドイツでは伝統あるクリームとして昔から大変好まれており、サラダのドレッシングなど冷たい料理に、またいろいろな肉料理など、多方面にわたって使われています。発酵によって、クリームに程よい酸味と香りがあるのが特徴です。
クレーメ・フレッシュ(Crème fraiche)
フランス生まれのサワー ・クリームの一つにクレーメ・フレッシュがあります。乳脂肪分30〜40%を含有するクリームで、まろやかな風味を持ち、料理の風味やコクを出す脇役として人気があるクリームの一つです。
熱いものに混ぜても固まりにならないことから、特に煮込み料理やソースなどの調理に適しています。またハーブ類やホースラディッシュなどを加えたクレーメ・フレッシュも製造販売されています。
シュマント(Schmand)
昔は、無発酵の普通のクリームのことを、日常口語でシュマントと言っていましたが、現在ではサワー ・クリームの一つとして製造されています。ただし現在でもカフェー・ザーネ(コーヒー用クリーム)のことをシュマントと呼んでいる地方もあります。
乳脂肪分20〜29%を含有するこのシュマントは、固めのクリームで、あらゆる種類の料理に使うことができます。また通常このシュマントは超高温短時間殺菌法(Ultrahocherhitzung)で加熱殺菌されていることから、未開封の場合は常温での保存が可能です。
さてドイツのクリーム類をいろいろとご紹介してまいりましたが、やはりどうしても気になりますのが、そのカロリー数であるのは、どなたも同じと思います。下の表はドイツで紹介されている、各種クリーム類のカロリー表と主要成分をまとめたものです。
なお、日本の食品成分表でクリームのカロリー数を見てみますと、乳脂肪分45%のクリームで433kcal、38.3%のホイップ用クリームで422kcal、また乳脂肪分18.3%のコーヒー・ホワイトナーで211kcalとなっています(資料:五訂食品成分表)。これらの数字を比較してみても、ドイツのクリーム製品のカロリー数が、私たちが考えるほどには高くないのがわかります。ちょっと安心というところでしょうか。
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