ドイツの食材
豚肉

豚肉
ドイツは「ビールとソーセージの国」というイメージを持たれている方が多いことと思います。ドイツは、ハムやソーセージ類の原料となる豚肉の生産量世界第3位を誇る国でもあります。高品質で美味しく、そして安全な豚肉を多く生産するからこそ、バリエーションに富んだハムやソーセージ、そしてサラミが生まれるというわけです。

良質のタンパク質や、ビタミンB群、さらにはミネラル類を多く含む豚肉は、数多くのドイツ伝統料理や地方料理、そして毎日の家庭料理に欠かすことのできない食材として、多くの人から愛されています。2007年におけるドイツの豚肉国内生産量は454万トンにおよび、豚肉と豚肉加工品の輸出量も約176万トン(製品重量ベース)にのぼります。

日本では、2001年からドイツ産豚肉の輸入が凍結されていましたが、このたび、ドイツ産豚肉・豚肉製品の安全性が確認され、5月23日、輸入再開が決定しました。これにより、日本の皆様に、高品質で美味しいドイツ産の豚肉を、再びお届けできるようになりました。同時に、これまで輸入禁止となっていた非加熱の豚肉加工品も、輸入できるようになりましたので、ドイツ産のサラミや生ハム、ドライ・ソーセージ類が日本に居ながらにして楽しんでいただけることになります。

今回から2回にわたり、皆様にドイツ産豚肉についてご紹介いたします。今回はまずドイツの豚肉事情について、様々な統計を通してご紹介するとともに、ドイツの豚の品種について簡単にご案内いたします。

ドイツ・豚肉事情
以下の図はEU各国の2007年における国産豚肉の生産量(枝肉ベース)を示したものです。ドイツの豚肉生産量は前年を5%上回る454万トンで、EU域内第1位となっています。第2位のスペインと比べても100万トン近い開きがあります。

EU各国の豚肉国内生産量(2007年)

注:枝肉ベース(内臓を取り除き、背骨から2つに切り分けた状態を指す)。統計出典:ZMP(暫定値)



世界的にみても、ドイツは世界有数の豚肉生産国と言えます。FAO・国際連合食糧農業機関の発表によると、世界最大の豚肉生産国かつ消費国は中国で、2006年の豚肉生産量は約5,290万トンにのぼり、第2位のアメリカの956万トンを大きく引き離しています。そしてドイツが世界第3位に位置し、スペインが第4位、次にブラジルの283万トンと続きます。因みに、同年の日本の豚肉国内生産量は約125万トンでした(出典:農林水産省)。

ドイツの豚肉需給事情について、もう少し詳しく示したのが次の表です。2007年におけるドイツの豚肉の純生産量(国内生産−輸出+輸入)は498.5万トンにのぼり、2002年の411.0万トンに比べて21.2%増加しています。純生産量(Nettoerzeugung)とは、国産の豚をと畜して生産する豚肉国内生産量(Bruttoeigenerzeugung)に、肉豚として輸入した生きた豚や子豚の重量をプラスし、また同様の目的でドイツから輸出した豚の重量をマイナスして算出する生産量(枝肉ベース)のことを言います。

さらに、外国で処理され、枝肉の状態で輸入される豚肉、同様にドイツ国内で枝肉に処理されてから輸出される豚肉の量や、さまざまな豚肉加工品(ハムやベーコン、サラミやソーセージ、それらの瓶・缶詰製品など)の輸出入を枝肉重量に換算して算出されるのが、ドイツ国内で供給される豚肉の数量、いわゆる消費仕向量です。近年は豚肉および豚肉加工品の輸出が好調で、2002年の74.2万トンから156.8万トンへとほぼ倍増し、純生産量の増加分の殆どが輸出に振り向けられています。そのため、2007年のドイツ国内における豚肉消費仕向量は457.9万トンと、2002年に比べて2.8%の伸びに留まっています。

ドイツにおける豚肉の供給量

   2002年

   2006年

   2007年

豚肉国内生産量

3,995

4,321

4,540

生豚および生子豚

輸入 (+)

199

405

510

輸出 (-)

84

64

65

豚肉純生産量(総生産量)

4,110

4,662

4,985

豚肉および豚肉加工品 1)

在庫増減数(-)

0

0

13

輸入 (+)

1,087

1,109

1,174

輸出 (-)

742

1,288

1,568

豚肉消費仕向量

4,456

4,484

4,579

一人当たりの年間消費量・粗食料ベース 単位:kg

56.9

54.5

55.7

一人当たりの年間消費量・純食料ベース 単位:kg

41.0

39.3

40.1

単位:1,000トン、統計出典:ZMP / 2007年度数値は暫定値
1) 食肉加工品は枝肉重量換算値



ドイツでは、豚肉の自給率は99.2%にのぼり、一人当たりの年間消費量は粗食料ベースで55.7kg、純食料ベースで40.1kgとなっています。粗食料ベースでの消費量とは、枝肉をベースにして算出したもので、この中には骨や飼料用となる部分、減耗される量なども含まれています。それに対して純食料ベースで算出したものは、私たちの口に入る状態(Menschlicher Verzehr)になった肉の量をベースに算出しています。

因みに、ドイツ人一人当たりが年間に消費する肉および肉加工品の量は全体で約90kg(粗食料ベース)で、このうち、豚肉及び加工品の消費量は55.7kg、肉全体の実に62%を占めています。いかに、豚肉やソーセージなどが好きか、お分かりいただけると思います。因みに、日本人一人あたりの豚肉消費量は粗食料ベースで18.9kg、純食料ベースで10kgとなっています(統計出典:農林水産省)。

さて、次に豚肉の貿易統計をご紹介いたしましょう。下の表から明らかなように、2007年にドイツは111万トンの豚肉および豚肉加工品を輸入する一方、176万トンを輸出しています(いずれも製品重量ベース)。輸入相手国としてはベルギー/ルクセンブルグ(34.4万トン)、デンマーク(30.2万トン)、オランダ(18.9万トン)が上位に位置し、EU諸国がその殆ど(98.8%)を占めています。輸出相手国でもイタリア(31.1万トン)、オランダ(24.6万トン)、イギリス(15.3万トン)など、EU諸国のシェアが合計81.9%とかなり高いものの、最近はロシアや香港など、域外輸出も増加しています。なお、2007年の日本向け輸出は加熱処理された豚肉加工品213トンに限定されていましたが、輸出再開とともに、今後大きく伸びることが期待されます。

ドイツの豚肉および豚肉加工品の輸出入(国別、2007年)

輸   入

EU (小計)

1,098,793

98.8%

 ベルギー/ルクセンブルク

344,346

31.0%

 デンマーク

301,972

27.1%

 オランダ

189,267

17.0%

 スペイン

73,428

6.6%

 イタリア

39,467

3.5%

 フランス

34,708

3.1%

 オーストリア

31,675

2.8%

 その他のEU諸国

83,930

7.5%

EU以外 (小計)

13,558

1.2%

合 計

1,112,351

100.0%

輸   出

EU (小計)

1,442,688

81.9%

 イタリア

310,577

17.6%

 オランダ

245,757

14.0%

 イギリス

152,759

8.7%

 オーストリア

118,221

6.7%

 デンマーク

85,821

4.9%

 フランス

83,337

4.7%

 ポーランド

68,973

3.9%

 その他のEU諸国

377,243

21.4%

EU以外 (小計)

318,741

18.1%

 ロシア

151,236

8.6%

 香港

88,166

5.0%

 その他

79,339

4.5%

合 計

1,761,428

100.0%

出典:ZMP、単位:トン(製品重量ベース)



2006年までの貿易統計は枝肉ベースで算出されていましたので、2007年との比較はできませんが、近年、ドイツ産の豚肉および豚肉加工品の輸出量は明らかな増加傾向を示しています。EU諸国への輸出量は2003年から2006年の間に約65万トンから約108万トンに増加し、EU諸国以外のその他の国への輸出も13.6万トンから21.2万トンと着実な伸びを見せています。

尚、金額ベースでは、BMELV(ドイツ食糧農林消費者保護省)発表の資料によると、2006年のドイツにおける豚肉および豚肉加工品の輸入高は約23億ユーロ、輸出高は約30億ユーロとなっています。

ドイツ・養豚事情
ドイツ語で豚をシュヴァイン(Schwein)と呼びます。また、性別でその呼び名をかえ、メス豚のことをザオ(Sau)、オスの豚をエーバー(Eber)とも言います。さらに、子豚をフェルケル(Ferkel)、生後15〜16週頃の豚をロイファー(Läufer)と呼んでいます。

料理の世界では子豚、特に生後6週間前後のまだ母乳を飲んでいる子豚をシュパン・フェルケル(Spanferkel)、あるいはミルヒ・フェルケル(Milchferkel)と呼び、その柔らかい肉質とマイルドな味わいから、丸焼きなどに調理され、珍重されています。

ヨーロッパでイノシシ(ヴィルト・シュヴァイン=Wildschwein、野生の豚)をハウス・シュヴァイン(Hausschwein、飼育豚)として飼養、養豚するようになったのは、今から7000年前頃ともそれ以前とも言われています。豚は私たち人間の長い歴史の中で最も飼い馴らされた家畜として、さらに肉、脂、そして革に鞣される皮と、いろいろな部位を提供することのできる家畜として重要な役目を担ってきました。

ドイツでは中世以後、豚肉は大変好んで食されるようになり、現在に至るまで料理のメニューには欠かせない食肉の一つとなっています。ドイツ人が肉類の中で、最も多く食する肉であることは、すでにご紹介しました数字からも、ご納得いただけることでしょう。

豚肉は脂肪分が多い肉とイメージする方が多いかもしれません。確かに、19世紀におけるドイツでの養豚の目的の一つは豚から脂をとることでした。また脂肪分の多い肉は、エネルギー源となる食材として多くの人、特に肉体労働従事者から好まれていました。その後徐々に工業化・近代化が進み、消費者の好みが低脂肪の豚肉へと移ると、こうしたニーズに応える豚の品種が養豚されるようになりました。一時期、第二次世界大戦中と戦後しばらくの間はまた、脂肪の多い肉が好まれていましたが、1950年代以降は、脂肪を大幅にカットした豚の品種が大量に飼養されるようになりました。ただ、肉の脂は料理のうま味を引き出す大事な役目を持っていることから、低脂肪の豚は調理した際に、最高の味を提供するとは言えなかったようです。飼料品質の向上や養豚技術の進歩の目覚しい現在では、以前よりは脂肪分を増やし、さらにその脂が霜降りに肉の中に入るよう研究改良された豚が飼育されています。このように、ドイツでは時代時代の消費者のニーズにあった豚を生産してきました。

次に、ドイツ各州における養豚業の実態をご案内しましょう。下の表は各州における飼養戸数と飼養頭数の移り変わりを1999年と2007年で比較したものです。ドイツ全体でみると、豚飼養戸数はこの8年の間に14万戸から7.9万戸へとほぼ半減しましたが、この間の飼養頭数は逆に約3.6%増加し、養豚業の大規模化、効率化が進んでいることがうかがえます。年間に、と畜された豚はおよそ5,330万頭になりました。

ドイツでは全国どこの州でも豚が飼養されていますが、特に豚飼養および豚肉生産が盛んな州として、ニーダーザクセン州とノルトライン・ヴェストファーレン州があげられます。両州の飼養頭数はそれぞれ807.9万頭、631.4万頭にのぼり、大規模は飼養家や飼養企業が多いことをあらわしています。一方、バイエルン州、バーデン・ヴュルテンベルク州などでは小規模飼養家が多く、飼養頭数では上記の二州と大きな開きがあります。

ドイツにおける豚の飼養戸数と飼養頭数 (1999年および2007年)

飼養戸数

飼養頭数

飼養頭数内訳

種豚、子取り豚、
その他の雌豚

肥育豚

1999年

2007年

1999年

2007年

2007年

ドイツ全国

141.4

78.8

26,001.5

26,948.1

2446.5

24,501.6

ニーダーザクセン州

24.4

14.0

7,623.1

8,078.9

612.3

7,466.6

ノルトライン・ヴェストファーレン州

20.2

13.0

6,016.3

6,313.5

515.9

5,797.6

バイエルン州

43.9

22.0

3,735.8

3,731.3

374.3

3,357.0

バーデン・ヴュルテンベルク州

23.0

13.0

2,303.8

2,218.8

256.3

1,962.5

シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州

3.2

2.1

1,415.1

1,485.2

118.3

1,366.9

ザクセン・アンハルト州

1.2

0.9

892.0

1,072.3

135.3

937.0

ブランデンブルク州

1.4

1.0

764.4

817.6

102.6

715.0

メクレンブルク・フォアポンメルン州

1.0

0.7

678.5

778.7

80.8

697.9

テューリンゲン州

1.9

1.4

682.6

775.6

86.8

688.8

ヘッセン州

15.0

8.0

864.5

723.2

61.2

662.0

ザクセン州

1.7

1.5

632.8

630.8

74.4

556.4

ラインラント・プファレツ州

4.3

1.7

360.6

305.9

26.8

279.1

ザールラント州

0.3

0.2

27.1

15.0

1.3

13.7

【参考】日本

13.4

7.6

9,904

9,759

915.0*

8,118.0

単位:飼養戸数=1,000戸、飼養頭数=1,000頭。統計出典:ZMP(各年11月時点)、農林水産省(各年2月時点)
ハンブルク州、ブレーメン州、ベルリン州の飼養戸数・頭数は未掲載。(*日本:子取り用豚のみ)



ドイツ・豚の品種
豚は現在に至るまで、世界各国でいろいろな品種が生み出されてきました。養豚では、肉豚として出荷する豚の肉質をはじめ、発育速度や病気に強いことなどいろいろな点が重要となります。そしてこれらをそなえた豚を生産するために、親となる種豚、繁殖豚を改良するわけです。

ドイツでは多くの豚の品種が各州や各地域にある育種協会が管理する血統登録簿(Zuchtbuch:ツーフト・ブッフ)に登録されています。ここでは、現在ドイツで飼養されている豚品種の中から幾つかをご紹介します。

■ドイチェ・ランドラッセ(Deutsche Landrasse)

ランドラッセはランドレースとして日本でも知られている品種で、デンマークの在来種とイギリスのヨークシャー種を交配して作られた品種です。ただしドイチェ・ランドラッセ(ドイツ産ランドレースという意)は1900年代初頭にドイツ在来種とイギリス種を交配して作られた品種で、1960年代後半までフェアエーデルテス・ドイチェス・ラントシュヴァイン(Veredeltes Deutsches Landschwein)と呼ばれていました。体長が長く、一頭あたりの肉量が多い豚です。
ドイチェ・ランドラッセは多産性で、一度の出産で平均9.6匹の子豚を産みます。
ドイツ飼養豚の中で最も割合が多い種で、さらに品種交配の原種豚ともなっています(資料:aid、BLE)。

■ドイチェス・エーデル・シュヴァイン(Deutsches Edelschwein)

ドイツ産高級豚という意味の名を持つドイチェス・エーデル・シュヴァインは、19世紀終わりにドイツ在来種とイギリスのヨークシャー種を交配させて出来た品種で、ドイチェ・ランドラッセに次いで、飼養豚の中での割合が多い品種です。成長が早く快活な豚で、耳が立っているのが特徴です。主に北ドイツ地域で飼養されています。



■シュヴェービッシュ-ヘーリッシェス・シュヴァイン(Schwäbisch Hällisches Schwein)

ドイツ南部バーデン・ヴュルテンベルク州のシュヴェービッシュ・ハル近郊で多く飼養されていたことから命名された豚で、18世紀終わりにはすでにヘーリッシャー・シュラーク(Hällischer Schlag)と言う呼び名で存在していたと言われている品種です。19世紀に入りいろいろな品種と交配されたようですが、脂肪の多い肉質から、1960年代には需要がなくなり、ドイツの血統登録簿からも消え、1980年代はじめには絶滅の危機に瀕しました。その後復活し、血統登録簿にも再登録されています。

■アングラー・ザッテル・シュヴァイン(Angler Sattelschwein)

アンゲルン(Angeln)は北ドイツのシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州北東部にある地方です。1920年代半ばに、この地方の黒い模様の入った在来種にイギリスの品種を交配させて作られたのがアングラー・ザッテル・シュヴァインです。ザッテルとはドイツ語で鞍のことで、背中に鞍を背負ったような模様が入っていることから命名されました。
脂肪分が多い肉質から1960年代からやはり需要が減った品種の一つです。多産性で産肉性の高い品種ですが、現在でも種豚が少ない希少豚とのことです。

これらの品種の他にも、ドイツでは多くの品種が登録されています。例えば日本でも飼養されているアメリカ産の褐色をした品種デュロック(Duroc)や、ベルギー原産のピエトレンがあげられ、ライコマ(Leicoma)と呼ばれるドイツ産ランドレース、オランダ産ランドレ−ス、デュロック、ザッテル・シュヴァインなどを交配して作られた品種も登録されています。このライコマ種は東独時代にライプツィヒ・Leipzig、コトブス・Cottbus、マグデブルク・Magdeburgの3つの地域で飼養されていたことに因んで、それぞれの土地名の頭文字を取って命名されました。


はじめにご案内いたしましたように、今年5月より、ドイツ産豚肉と非加熱の豚肉加工品が日本へ輸入可能となりました。ドイツ産豚肉の輸入情報をお知りになりたい方、またドイツ産豚肉や豚肉加工品のサプライヤーをお探しの方は、当CMA-ドイツ農産物振興会・日本事務所(info@cmajapan.com)へお問い合わせください。

今回の「ドイツ料理のレシピ」コーナーでは、豚肉を使った料理を2品ご紹介しています。2品ともにオーブンで調理する料理ですが、簡単にできて美味しいおかずとなる料理です。是非一度お試しください。

次回はドイツ産豚肉の部位について、またそれぞれの部位がどのような料理に適しているかをご紹介いたします。

参照