ドイツの食材
ドイツの焼き菓子 2

焼き菓子 2

先月に引き続き、ドイツの焼き菓子をご紹介しましょう。今月は、イーストを使った発酵生地のパン菓子「ヘフェタイク」(Hefeteig)と、卵を使った軽い口当たりのお菓子「ビスキュイ」(Biskuit)、薄まきビスケット「ヒッペンタイク」(Hippenteig)をご紹介します。いずれもドイツ人が大好きな焼き菓子です。この機会に是非お試しください。

ヘフェタイク(Hefeteig)
ドイツではコーヒータイムに、レーズンやオレンジピールなどのドライフルーツ、クルミ、アーモンドなどのナッツ類、またはシナモン、アニスなどの香辛料を入れた菓子パンをよく頂きます。

ヘフェ(Hefe=イースト)はパン種として昔から用いられてきました。かつてパン作りには、酵母菌のザワータイク(Sauerteig=酸味のある発酵生地)が使用され、作るのにかなりの時間を要していましたが、現在では市販のイーストを利用して手軽に作ることができます。

それでも、イーストを使った発酵生地のパン菓子は作るのに手間がかかるため、敬遠されがちです。しかし、失敗を恐れずにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。うまく出来上がった時の喜びは格別です。

生イーストもドライイーストも冷蔵庫で保存できますから、まずイーストの扱いを学習し、時間に余裕のあるときにパン作りにチャレンジすることもできます。焼いている間に漂うパンの香りはこの上ないものです。さて、では作り方のコツを見ていきましょう。

生地を作りましょう

フォアタイク(Vorteig=発酵種)を作るには、生イーストを使用するのがベストですが、スピードアップしようとする場合は、ドライイーストでもよいでしょう。発酵種は次のように作ります。レシピにしたがった分量の水または牛乳を人肌程度に温め、そこに生イーストを砕いて砂糖を少量加えてかきまぜ、表面が少し泡だった状態になるまで、約15分間放置します。

この発酵種を小麦粉、砂糖、塩、バター、水などの材料に加えて、こねます。こねあがったら乾燥しないように生地に覆いをかけ、2倍程度に膨らむまで室温か、温かい所に放置します。その後、生地をガス抜きし、好みの形に成形して、二次発酵させ、オーブンで焼きます。

ドライイーストを用いれば最初の発酵を省略できるので、より手早くできます。ドライイーストの場合は小麦粉の中に混ぜ、その他の材料とともにこねます。以降は生イーストと同じプロセスです。

イーストのはたらきについて

さて、パン生地に不可欠なイーストはどんな役割を果たすのでしょうか? 薄茶色の生イーストの固まりには、菌の一種である、無数の小さなイースト細胞(Hefezellen)があります。イースト菌は一定の温度下で糖分と水分を添加すると活性化し、膨張します。このとき糖分が炭酸ガスとごくわずかのアルコールに変換され、イーストの発酵が始まるのです。このときたくさんの気泡が発生します。生地の中に混ぜ込まれた後、発酵はさらに進んで、生地を膨張させます。イーストがうまく発酵した生地の表面は滑らかで、絹のような手触りで、薄く広がります。

イースト菌は60℃以上の高温では死滅します。そのため、発酵プロセスやこねる際に、これ以上の温度にならないように注意してください。従って、高温のオーブンで焼成するとイースト菌は死滅してしまいます。

一方、低温になるとイースト菌は活動を停止するため、生地を冷蔵庫に入れて発酵を遅らせることができます。この特徴を利用して、夜、生地を作って冷蔵庫に入れておき、ゆっくりと発酵させてから、翌朝に焼きたてのパンを味わうということができます。但し、冷凍保存する場合は3ヶ月が限度と考えてください。

アラカルト

ドイツ人がよくコーヒータイムに頂くのは、砂糖やバターのたっぷり入ったブリオッシュ(Brioche)、ドライフルーツを入れた三つ編みパン(Hefezöpfe)、蜂蜜入りのビーネンスティック(Bienenstich)、ブッタークーヘン(Butterkuchen)などです。ピッツァもイースト生地を薄くのばして焼いたものです。トマトソースとチーズをのせたパリパリのピッツァは、もちろんドイツ人も大好きです。

下左の写真はチーズスティック(Käsestangen)。すりおろしたチーズを生地に加え、短冊型に切ってねじり、仕上げに黒ゴマをふります。右はローゼンクーヘン(Rosenkuchen)。オレンジ風味の生地にレーズンと芥子の実をフィリングにして巻き、1つの型に入れて焼いた菓子パンです。


今月の「ドイツ料理のレシピ」コーナーでは、ベルリーナーと呼ばれる、イースト生地を使ったジャム入りの丸い揚げ菓子をご紹介しています。どうぞお試しください。

ビスキュイ(Biskuit)
ビスキュイ(Biskuit)は、日本ではスポンジケーキとしてお馴染みの、肌理の細かい、やわらかな口当たりのよい生地のお菓子です。

この生地は泡立てが基本ですから、前にご紹介したイースト菓子やビスケット、パイ生地を指す「タイク」(Teig=しっかりした生地)ではなく、「マッセ」(Masse=柔らかい生地)または「タイクマッセ」(Teigmasse)と呼ばれます。

泡立てて空気をたっぷり含んだ生地はオーブンで焼くと、元の3倍くらいに膨らみますが、焼き上がりも非常にソフトです。ふわふわの生地を作るためのコツは、卵をしっかりと泡立てることです。手で泡立てるには、力と時間がかかりますが、電動泡立て器があれば、どなたにでも簡単にできます。

卵黄を泡立てます

卵をしっかりと泡立てるためには、まず泡立て器やボウルに油脂や水分が付着していないか、注意しましょう。泡立ては湯せんにかけて温めながら行います。このとき、お湯の温度が高すぎると卵が凝固してしまいますから、適温を保つことに注意してください。

卵は卵黄と卵白に分けて、別々のボウルで泡立てます。まず、卵黄に砂糖を加え、泡立て器が重く感じられるようになって、もったりとした淡黄色のクリーム状になるまで泡立てます。このとき、砂糖は完全に溶けた状態になっています。泡立て器を持ち上げてみて、ゆっくりと下へ落ちていく固さになっていればOKです。

卵白を泡立てます

卵白は固く、角がピンと立つ状態まで泡立てます。この状態をメレンゲと呼びます。メレンゲとふるった薄力粉を交互に数回に分けて、泡立てた卵黄に合わせて生地を作るやり方もあります。または、泡立てた卵黄に卵白を混ぜ、その後に薄力粉を混ぜます。このとき、せっかく立てた泡が消えないように、ゴムベラでサックリと混ぜ合わせます。

なお、このビスキュイにバターを加えた生地は、ヴィーナー・マッセ(Wiener Masse=ウィーン風スポンジケーキ)と呼ばれ、やわらかく、リッチな味わいです。ザッハトルテ、バースデーケーキなどに用いられます。

オーブンで焼きます

生地が出来上がったら、すぐに焼き上げます。すぐに焼かないと、生地に含まれた空気が失われてしまい、ふんわりとした食感が得られません。丸型、角型などお好きな型に入れて、またはロールケーキの場合は、オーブンプレートにシートを敷き、そこに生地を流し入れて焼きます。丸型を用いず、オーブンシートを敷いたオーブンプレートに、セルクルという大きなリング型を置いて、そこに生地を流し込んで焼くこともできます。型には薄くサラダ油かバターを塗っておきます。温度は中温が適しています。

仕上げ

焼き上がったら、すぐに型から外して、ケーキクーラーの上で冷まします。型から外すときは、まずナイフを型と生地の間に入れて、分離させるとよいでしょう。オーブンプレートの場合は、くずれないように丁寧にはがします。

焼き上がったビスキュイ全体に冷たい水かシロップ(お好みでブランデーなど洋酒を少々加えても)を刷毛で塗ります。完全に冷めたら、クリームやチョコレートでデコレーションします。季節のフルーツをあしらったり、あるいは行事に合わせてお好きなデコレーションを楽しんでください。

アラカルト

・シュヴァルツヴァルト風キルシュトルテ(Kirschtorte nach Schwarzwälder Art)

シュヴァルツヴァルト(黒い森)はドイツ南西部にある森林です。ココア入りのビスキュイを丸型で焼き、生クリームと薄く削ったチョコレート、キルシュ(サワーチェリー)でデコレーションします。好みでキルシュヴァッサーの香りをつけます。




赤い房スグリ(Johannisbeere=ヨハニスベーレ)の実とジャムを巻き込んだ、ロールケーキです。ドイツではスグリの実のジュースやジャムが好まれています。バニラソースを添えて。 これは、ちょっと変わったロールケーキ。焼いて皮を剥いた赤と緑のパプリカを角切りにし、チーズクリームに混ぜ合わせて巻いたものです。生地の砂糖は控えめで、パプリカパウダーを入れます。辛党の方におすすめ。


今月の「ドイツ料理のレシピ」コーナーでは、ベリージャムのロールケーキをご紹介しています。どうぞご覧ください。

ヒッペンタイク(Hippenteig)
ヒッペン(Hippen)とはいわば薄焼きビスケットで、焼きたては非常に柔らかく成形しやすいので、写真のように棒状の型に巻きつけたりしてさまざまな形に成形することができます。中にクリームやフルーツを詰めて、おしゃれなデコレーションをすれば、素敵なおもてなしになります。ヒッペンはフランス風にチュイール(Tuiles)と呼ばれることもあります。

生地を作りましょう

固く泡立てた卵白に粉糖、ふるった薄力粉、溶かしバターを加えてなめらかになるまで混ぜるのが基本レシピです。ごくやわらかい半液体状の生地です。

オーブンで焼きます

グラスなどを利用して、オーブンペーパーの上に希望の大きさの円形を鉛筆で薄くなぞります(もちろんフリーハンドでも結構です!)。その印を付けたところに、生地をスプーンで薄く広げていきます。均等の厚さにすることが重要です。最初は少し歪んでしまうかもしれませんが、慣れてくればうまくいきます。

ヒッペンは薄いので2〜5分で焼き上がります。ですから、すぐに成形に取りかかれるように、あらかじめ器具を揃えておきましょう。また、ヒッペンは焼き上がり後、すぐ硬くなりますから、一度に沢山焼きすぎないよう、ご注意ください。

仕上げ

焼き上がったら、パレットナイフで慎重にオーブンシートから剥がし、すぐ成形にとりかかります。麺棒やグラスを使って凹ませたり、コルネ型で角笛のような形にしたり、タバコのように巻いたり、さまざまに工夫してみましょう。楕円形に焼き上げ、端を手で外側に曲げ、花びらのようして何枚か重ねても可愛いです。

成形後はケーキクーラーの上で完全に冷まします。完全に冷めたら、クリームやフルーツでデコレーションします。アイスクリームを入れてもいいですね。ただしデコレーションは、頂く直前に行ってください。時間が経つとクリームやフルーツの水分が出て柔らかくなってしまいます。デコレーションしない場合は、缶などに密封保存すれば数日間保存できます。

最後に、アドバイスをさらにもうひとつ。成形せず平らなままのヒッペンの表面にクリームを塗り、ベリー類をのせ、何枚か重ねてケーキのように見立てます。下の写真はクリームやフルーツをあしらったさまざまなヒッペンです。春先のパーティにいかがでしょう!

参照